研究課題/領域番号 |
25240004
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 直樹 関西学院大学, 理工学部, 教授 (40145826)
|
研究分担者 |
神山 直之 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (10548134)
谷川 眞一 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (30623540)
藤澤 克樹 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40303854)
瀧澤 重志 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40304133)
伊藤 仁一 熊本大学, 教育学部, 教授 (20193493)
東川 雄哉 中央大学, 理工学部, 助教 (20749486)
小林 祐貴 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (70756668)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 最速フロー問題 / 組合せ剛性理論 / 大域剛性 / 避難所配置問題 / 動的ネットワークフロー / ブレース追加問題 |
研究実績の概要 |
避難計画問題に対する成果は次の通りである.(1) 最速フロー問題に対しては,すでに大規模ネットワーク(778万点,3087万枝)に対する最速フローの計算に成功しているが,全体の実行時間の中で大部分を占めている最大フロー計算に関して複数種類の実装を行い,最速フロー問題に対する詳細な性能評価を行った.その結果,計算を途中で打ち切った際にも避難者数が最大となる方法を特定した. (2) 梅田地下街の浸水被害に対する接続ビルへの垂直避難計画に関する検討を行った.また,地下街の複数のカメラ映像から断面交通量を推定するアルゴリズムを開発した.避難所割当ての列挙に関して,収容率と移動距離のパレート解列挙アルゴリズムを開発し,大阪市住吉区のデータを用いて,高速性を確認した. (3) 動的なパスネットワークに対する最適施設配置計画問題に対して,既存の結果より高速な多項式時間アルゴリズムを開発した.さらに一般の動的ネットワークにおける施設配置問題に対して,施設数が定数の場合,完全多項式時間近似スキームを開発した.
組合せ剛性理論に関する成果は,次の通りである.(1) 剛体ヒンジ構造に対し,冗長剛性が大域剛性の必要十分条件であることを証明し,そこからConnellyの3次元大域剛性予想の反例を構成した.また対称な疎グラフの逐次的構成法を開発し,二面体群対称なフレームワークの剛性の組合せ的特徴づけを行った.(2) 多面体剛性の冗長性に関しては,特に正多面体に関して面を取り除く場合と辺を取り除く場合の具体例について考察を進めた.多面体の折り畳みに関しては,正十二面体に対して,より正確な折り畳み方が判明し,論文にまとめた.また,正二十面体に関しても少なくとも一つの折り畳み方を特定できた.(3) 3 次元のBar-jointフレームワークについてのブレース追加問題に対して,構成的なアルゴリズムを提案した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで大規模ネットワークによる最速フローの高速計算や実データを用いた性能評価に成功しており,梅田地下街での避難に関する一連の研究の進展もあり,応用分野の拡大も含めて概ね順調に推移している.以上から順調に推移している.
高次元の大域剛性特徴づけ問題において中心的話題であったConnellyの3次元予想の反例を導き,これまで未知であった組合せ的側面を明らかにしたことは,当分野における大きな進展であり,研究が順調に進展していると考えらる.また,次元のBar-joint フレームワークについてのブレース追加問題,正十二面体を平坦化する折りたたみの研究を展開することができた. 以上から研究は順調に推移している.
|
今後の研究の推進方策 |
避難計画については,1. より一般のグラフに対する実際的にも効率の良い最速フローアルゴリズムの実現に取り組み,可視化ソフトウエアの開発をおこなう.2. 最速フロー問題に対するモデルを改良して,様々な応用問題に適用することを目指し,実ネットワークデータ等を用いて実証実験を行う.最速フロー問題を多品種フロー問題へと拡張することによって,複数の始点と終点を持つフローに対応させることを目的とする.さらに,解法に線形計画問題を用いて,現実的かつ複雑な制約条件を考慮していく.3. 避難計画問題に対して,これまでに開発・利用した様々な計算手法について,避難完了時間,収容度の平準化,動線の交錯度合い,実際の計算時間等の観点から,梅田地下街を対象として,検証・比較を行う.さらに大阪広域を対象に,浸水からの避難の大規模シミュレーションのためのデータ構築と,簡易で高速な計算モデルの開発も行う.4. 避難計画問題に関連する時刻ラベル付き非巡回ネットワーク上の有向木詰込み問題に関する未解決問題の解決を目指す.5. パス・木より一般的な動的ネットワークにおける施設配置問題に対して多項式時間アルゴリズムを開発する.
組合せ剛性理論に関して,1. 周期的無限フレームワークの大域剛性の特徴づけ問題に取り組む.2次元の場合,一般的配置の有限フレームワークの大域剛性の組合せ的特徴づけがJackson-Jordanによって証明されている.これまで得られた大域剛性の知見をもとに,Jackson-Jordanの定理の拡張を行う.2. 正二十面体の折り畳みに関してどれだけの範囲まで可能であるかを特定することを計画している.それによって,切頭二十面体の精密な連続折り畳みを実現することが可能であると思われる.Panel-Bar-and-Hingeフレームワークの形態生成,建築デザインへの応用を試みる.
|