研究課題/領域番号 |
25240014
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
横田 治夫 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (10242570)
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研究分担者 |
宮崎 純 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (40293394)
小林 隆志 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (50345386)
荒堀 喜貴 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (50613460)
小口 正人 お茶の水女子大学, その他部局等, 教授 (60328036)
天笠 俊之 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 准教授 (70314531)
波多野 賢治 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (80314532)
渡辺 陽介 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80532944)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | 情報共有 / 不確実情報 / グラフ構造検索 / 秘匿性管理 / プライバシー保護 / 災害復旧 / 暗号化RDF |
研究実績の概要 |
熊本県、大分県で平成28年4月12日以降に発生した一連の大規模地震対応でも分かるように、大規模災害後に支援物資や支援活動の手配などを適切に行うことが重要で、そのためには、被災者間、支援者間、あるいは被災者と支援者間での円滑な情報共有が求められる。しかし、その中にはプライバシーに関わる情報も含まれ、情報開示可能な範囲として、医療従事者、自治体関係者、ボランティア、報道関係者、他の被災者といった利用者のタイプを考慮する必要がある。一方、災害によって情報を蓄積・通信する装置が損傷し、共有すべき情報が一部消失し、不確実になることも想定される。本研究では、災害後の部分的で不確実な情報から、利用者タイプにより異なる開示範囲を考慮し、復旧・復興に必要な情報を関係者間で共有するためのデータ管理技術を確立することを目的としている。開示可能な範囲でセキュアに情報を共有する技術、分散した部分的共有情報を効率よく収集するためのデータ管理に関する基盤技術を提供し、復旧・復興に貢献できるように当該技術分野を発展させることを目指して研究を進めている。 これまでに、被災者の避難状況やその他の関連情報をグラフ構造で表し、当事者の開示範囲に対する意思を尊重しながら、セキュリティを保ちつつ異なるタイプの利用者で情報を共有する上位層と、災害により装置に一部損傷を受けても被災地間で情報を共有できるようにする下位層に関する研究を進め、成果を出してきている。平成27年度においては、グラフ構造を暗号化する手法の改善により安全性を高めて情報を格納する方法と、秘匿性を考慮して利用者のクラスに対して適切な精度で集計結果を提供する方法を実装し、本研究で提案している被災情報ベンチマークでその効果を示した。また、地域的に通信が十分機能しないような環境での安否確認を可能とするトラフィック制御の手法についても評価を行い、効果を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、RDFを用いて被災者の避難状況やその他の関連情報をグラフ構造で表し、RDFを暗号化してセキュリティを保ちつつ、当事者の開示範囲に対する意思を尊重できるように異なるタイプの利用者での情報共有を可能とする上位層と、災害により情報を蓄積・通信する装置が一部損傷を受けても被災地間で情報を共有できるようにする下位層に関する研究を進めており、順調に成果を出している。 上位層については、RDFの要素に対して当事者が設定したアクセスレベルによって異なる暗号鍵を用いて暗号化し、アクセスレベルと利用者クラスの暗号鍵を対応づけたプロキシ再暗号化を行うことで、セキュリティを保ちながら開示範囲に対する当事者の意思を尊重した情報共有を可能とする手法を提案、特許化し、実装を進めた。その中で、暗号化RDFに対して検索可能とするための確定的暗号の安全性を高める独自の手法も取り入れていた。また、アクセスレベルで異なる暗号鍵を用いたRDFに対して、利用者のクラスに対応した精度で集計結果を提供する方法に関しても提案を行い、実装した。これらの提案手法を、本研究課題で提案し、実際の避難所情報をもとに作成した被災情報ベンチマークを用いて評価を行い、有用性を示した。また、関連して、検索技術や蓄積された情報の解析技術に関する研究も進めた。 一方、下位層に関しても、SNS の情報を活用して、地域的に十分情報伝達が行えないような環境での安否確認を可能とするトラフィック制御の手法についても評価を行い、効果を示している。また、被災地での電力消費を考慮した効率的な格納方法や、異なるストレージデバイスを考慮した格納方法等に関しても研究を進めた。 上位層、下位層とも提案手法の評価結果は良好で、それらの研究成果について、特許化を含め論文誌や国内外での口頭発表を行っており、研究計画に沿った順調な研究進捗状況であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
暗号化したRDFを用いて、セキュリティを保ちながら、当事者の開示範囲に対する意思を尊重できるように異なるタイプの利用者での情報共有を可能とする上位層に関しては、平成27年度において検索可能とするための確定的暗号の安全性を改善する手法の提案を行っているが、さらなる改善の可能性があり、検討を進める予定である。また、暗号化がされたRDFに対して、利用者のクラスに対応した精度で集計結果を提供する方法に関しても、準同型暗号を用いた集計方法の検討も行う。また、アクセスレベル毎に異なる暗号鍵を用いてプロキシ再暗号化を行う手法や、準同型暗号を用いる手法は処理コストが高いことから、処理コストを下げる方策に関しても検討を進める。それと同時に、関連する検索技術や情報解析技術に関する検討も進める。 また、災害により一部損傷を受けているストレージ装置やネットワーク装置等を利用して、部分的に不完全な情報を効率よく収集する下位層に関しては、分散ストレージの構成方法や、ネットワーク環境が十分機能しない環境での手法の検討を進める。 さらに、上位層と下位層を結合し、暗号化したRDF で記述された共有情報を分散蓄積し、災害後の部分的に損傷を受けた情報蓄積装置やネットワーク装置等の状況に対応しながら、必要に応じてデータ移動やデータ復旧を行う方法等に関しても検討を行う。特に、ネットワークの環境が不安定な状況において、ネットワークが再結合された場合のデータ移動量の削減等を考慮して、部分的に利用ができない分散ストレージにおける暗号化 RDF のレプリカの配置方法や暗号化情報の再構築方法に関しても検討を進める。
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