研究課題/領域番号 |
25240019
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水原 啓暁 京都大学, 情報学研究科, 講師 (30392137)
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研究分担者 |
北城 圭一 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (70302601)
上野 雄文 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00441668)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 認知神経科学 / コミュニケーション / 音声知覚 / 神経振動子 / 神経回路 / 脳機能イメージング / 身体性 / 引き込み |
研究実績の概要 |
ヒトの音声コミュニケーションにおいて,話者の顔を見ることによる神経振動子の位相リセットが音声理解を促進していることを明らかにするため,脳波と機能的MRIの同時計測,TMS刺激時の脳波計測,統合失調症患者のMEG計測を実施することを目的としている.前年度までに,音声聴取心理実験課題を構築するとともに,頭皮脳波計測を開始していた.平成26年度においては頭皮脳波計測を完了するとともに,脳波と機能的MRIの同時計測を開始した.また,TMS刺激時の脳波計測の準備を進めるとともに,音知覚おける統合失調症患者のMEG計測データの解析について検討を始めた. 音声聴取の心理実験課題を遂行時の脳波計測においては,音声と映像が同期呈示される場合において,聴取中の脳波が話者の韻律リズムに引き込み同調する結果を得た.さらに,このリズムの特定の位相において,音声の音節リズムと音素リズムに対応する脳波活動が増大することが明らかになった.このことは,話者の顔を見ることにより聴取者の脳波活動が位相リセットされることで,音声コミュニケーションが促進するという我々の仮説を支持するものである.ただし,頭皮上で観察する脳波のみでは,その活動の空間部位を同定することは困難である.そこで当初の予定通り,脳波と機能的MRIの同時計測を開始した.このことにより,位相リセットによる音声コミュニケーションの促進メカニズムの詳細を検討する. さらに,この脳波活動と機能との因果性を明らかにするために,TMS刺激時の脳波計測を予定している.この研究課題についても現在必要な準備を進めており,準備が整い次第,測定を開始する.また,統合失調症患者のMEG計測についても音知覚時の実験を実施しており,現在,データ解析の準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,音声聴取の心理実験課題の構築,および頭皮脳波計測を実施した後に,平成26年度以降に機能的MRIと脳波の同時計測,TMS刺激時の脳波計測,統合失調症患者のMEG計測を実施することを計画していた.現在までに,音声聴取の心理実験課題の構築,および頭皮脳波計測は予定通り終了しており,当初の仮説を支持する結果を得ている.また,既に機能的MRIと脳波の同時計測,TMS刺激時の脳波計測,統合失調症患者のMEG計測についても計画通り開始している. 以上のことから,おおむね当初の予定通り計画が進んでいると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
音声コミュニケーションにおいては,話者の顔を見ることにより,その音声知覚が促進することが知られている.本研究プロジェクトでは,この音声コミュニケーションの促進が,話者と聴取者の間のリズムの引き込み協調により実現されていると想定している.この仮説を検証するために脳波計測を実施し,音声の音節リズム,音素リズムに対応する脳波成分が,話者の韻律リズムに対応する脳波成分の特定位相において位相-振幅カップリングしていることが明らかになった.そこで,この脳波成分の空間部位を同定するために,脳波と機能的MRIの同時計測を実施する.さらに,視覚皮質をTMS刺激した際の脳波計測を実施することで,視覚情報による位相リセットが音声情報処理の促進の原因であることを検証する.統合失調症患者のMEG計測により,位相リセットと神経伝達様式との連関について検討する.以上により,神経振動子協調が脳内のみならず,脳(個体)間の情報伝達にも共通する神経基盤であることを検証する.
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