研究概要 |
意識や内省と呼ばれる心の内部に対する再帰的で能動的なアクセス-認知的メタプロセス-は、成人において最高度に発達した能力である。本研究の目的は、どのような認知的メタプロセスがどのような動物やどのような年齢の乳幼児に分有されているかを、広い系統群の動物を対象に分析し、この過程が、知識の不備の解消や思考過程の支援などの自己適応の向上や他者理解機能にいかに関連しているのかを明らかにすることである。25年度藤田は、フサオマキザルが刺激内容と位置という記憶内容の詳細をメタ認知できる可能性を示した。現在さらに分析中である(藤田、2013(口頭発表))。またフサオマキザルが自身の衝動性制御可能性を認知し、適応的行動を取りうるかを検討中である。さらにデグーが刺激の内容、場所、文脈を統合したエピソード的記憶を持つことを示した(Tsuzukiら, in prep.)。5歳児は将来の認知的状態を予見して適応的行動をとることを示した(Iwasakiら, in prep.)。社会的理解に関しては、フサオマキザルが第3者間のやり取りにおいて寛容な他者に対して好感を抱くこと(Andersonら, submitted)、フサオマキザル同様、イヌが第3者間のやり取りにおいて身勝手な他者に嫌悪感を抱く可能性(Chijiiwaら, in prep.)を示した。その他、ニワトリが逆ツェルナー錯視(Watanabeら, 2013)と逆エビングハウス錯視(Nakamuraら, 2014)を知覚すること、ハトが長期記憶の不十分さをメタ認知し、適切に情報を希求すること(Iwasakiら, 2013)、フサオマキザルが身勝手な第3者を感情的に評価すること(Andersonら, 2013a,b)等を国際誌に公刊した。板倉は、9ケ月、12ヶ月齢の関西圏の乳児を対象に、異なる方言話者に対する社会的な選好バイアスを検討した。その結果、9ケ月児では差が見られなかったが、12ヶ月児は関西方言話者から差し出されたおもちゃを有意に多く選択することがわかった(奥村ら,印刷中)
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