研究課題/領域番号 |
25240021
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
船橋 新太郎 京都大学, こころの未来研究センター, 教授 (00145830)
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研究分担者 |
篠本 滋 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60187383)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 前頭連合野 / 記憶想起 / トップダウン制御 / トップダウン信号 / 遂行機能 / 単一ニューロン活動 / 対連合学習 / サル |
研究概要 |
課題の訓練が完了し、前頭連合野外側部より単一ニューロン活動の記録を行ってきた1頭のニホンザルに加えて、今年度は1頭の新規ニホンザルを加えて実験を実施した。新規のサルには、長期記憶からの情報の想起が必要で、想起時に前頭葉からのtop-down制御信号が必要であることが知られている対連合学習課題と、情報の一時的な保持が必要であるが、記憶からの情報の想起を必要としない遅延見本合わせ課題を学習させた。訓練が完了し、外側部からのニューロン活動記録を行っているサルと課題の条件を同じにするため、12対の視覚刺激を用いた対連合学習課題の訓練に時間を費やし、年度末にようやく課題の訓練を終了した。 先行研究で前頭連合野外側部から記録した約400個のニューロン活動を解析し、見本刺激呈示期の応答潜時の分布、刺激に対する選択性、参照刺激や妨害刺激として呈示した時の応答との比較など、応答特徴の詳細な解析を行った。また、第1遅延期の活動については、活動の時間パターンの解析に加えて、刺激に対する選択性、対情報の表象の有無、対情報の想起の有無等を解析し、トップ・ダウン信号としての可能性を検討した。宮下らの下側頭葉で行われた研究結果と比較した結果、前頭連合野で観察されたニューロン活動がトップ・ダウン信号として下側頭葉ニューロンの活動を修飾している可能性が示された。 前頭葉からの単一ニューロン活動の記録・解析と並行して、同軸多連電極による複数細胞の活動の同時記録、および、これらの電極からの局所電場電位(local field potential)の記録を可能にするため、電極の設計・製作・注文、ならびに記録方法の改良や確立などの準備作業を行った。現在、1本の電極を使用して、単一ニューロン活動と局所電場電位の同時記録が可能になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
12対の視覚刺激を使用した対連合学習課題の訓練を終了するには1年ほどの期間が必要であり、今回の新規のサルの訓練にも、ほぼ同様の期間を必要とした。同時に行わせる予定の遅延見本合わせ課題の訓練は、対連合学習課題の変形として訓練が可能になるため、対連合学習課題が充分に訓練されていれば、比較的短時間で訓練を終了することが可能である。 今年度は前頭葉眼窩部からの記録を開始する計画であった。しかし、同軸多連電極による複数の単一ニューロン活動と局所電場電位の同時記録法の確立を先行させ、これが完成した後に前頭葉眼窩部および前頭葉内側部からの多細胞活動の同時記録や局所電場電位の記録を開始する方が研究成果をあげ易いことから、電極の選定と記録法の確立のための準備を優先させた。 また、先行研究で外側部から記録したニューロン活動を解析し、日米の神経科学学会で成果報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
新年度には新たにサル1頭を加え、このサルの訓練を終了させて、3頭での実験を早期に実施できるようにする。 FHCから購入した12の電極をもつ同軸多連電極による複数の単一ニューロン活動の同時記録と、これらの電極から記録される局所電場電位の同時記録を可能にする記録システムを確立する。同時に、記録した単一ニューロン活動や局所電場電位の解析のためのプログラム作成を行う。先行研究で外側部からニューロン活動を行った動物を使用して、同軸多連電極によるニューロン活動記録を行い、記録システムの動作確認、解析プログラムの確立を完了する。 連携研究者である篠本滋准教授とともに、局所電場電位を使用した前頭連合野内局所神経回路の同定法やその動作の解析法、ならびに、前頭連合野の異なる領域間の情報処理回路の同定法やその動作の解析法の検討を開始する。
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