研究課題
前頭連合野外側部の単一ニューロン活動の記録に加えて、今年度は1頭のニホンザルの前頭葉眼窩部(前頭連合野腹外側部)から単一ニューロン活動を記録し、解析した。サルには、長期記憶からの情報の想起が必要で、想起時に前頭葉からのtop-down制御信号が必要であることが知られている対連合学習課題を行わせた。前頭連合野外側部からのニューロン活動記録時と課題の条件を同一にするため、12対の視覚刺激を用いた対連合学習課題を行わせた。122個の単一ニューロン活動を前頭葉眼窩部から記録し、先行研究で前頭連合野外側部から記録した約400個のニューロン活動との比較を試みた。見本刺激呈示期の応答潜時の分布、視覚刺激に対する選択性、同一視覚刺激を見本刺激、参照刺激、妨害刺激として呈示した時の応答との比較など、応答特徴の詳細な解析を試みた。また、第1遅延期の活動については、活動の時間パターンの解析に加えて、見本刺激に対する選択性、対となる視覚刺激の情報を表象しているかどうか、あるいは、対となる視覚刺激の情報の想起に関わるかどうか等の解析・比較を試みている。前頭連合野外側部が後部連合野にトップ・ダウン信号を出力していることはよく知られているが、前頭葉眼窩部が同様の機能を果たしている報告はない。したがって、両領域のニューロン活動の比較により、前頭連合野外側部が出力するトップダウン信号の実態の解明を試みている。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、昨年度に引き続き、同軸多連電極による複数細胞の活動の同時記録、および、これらの電極からの局所電場電位(local field potential)の記録を可能にするため、記録方法の改良や確立、解析プログラムの作成のための作業を行った。同軸多連電極による複数の単一ニューロン活動と局所電場電位の同時記録法の確立を先行させ、これが完成した後に前頭葉眼窩部および前頭葉内側部からの多細胞活動の同時記録や局所電場電位の記録を開始する予定であったが、電極の固定や記録方法の確立に手間取ったため、方針を変更し、前頭葉眼窩部からの単一ニューロン活動記録を行うこととし、約120個の単一ニューロン活動記録を得ることができた。その解析結果と前頭連合野外側部のニューロン活動の解析結果の比較により、トップダウン信号に関する新たな知見が得られている。
今年度やり残したFHCから購入した12の電極をもつ同軸多連電極による複数の単一ニューロン活動の同時記録と、これらの電極から記録される局所電場電位の同時記録を可能にする記録システムを確立する。同時に、記録した単一ニューロン活動や局所電場電位の解析のためのプログラム作成を行う。単一ニューロン活動記録を行ってきたサルを使用して、同軸多連電極によるニューロン活動記録を行い、対連合学習課題に関わる前頭連合野の機能、それを可能にする神経メカニズム、そして、前頭連合野から発せられるトップダウン信号の実態を明らかにする。同時に、連携研究者である篠本滋准教授の協力を得て、局所電場電位を使用した前頭連合野内局所神経回路の同定やその動作の解析、ならびに、前頭連合野の異なる領域間の情報処理回路の同定やその動作の解析の方法を確立する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 6件) 備考 (1件)
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http://www.pfc.kokoro.kyoto-u.ac.jp