研究課題/領域番号 |
25240023
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森 周司 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (10239600)
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研究分担者 |
伊良皆 啓治 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (20211758)
廣瀬 信之 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (40467410)
積山 薫 熊本大学, 文学部, 教授 (70216539)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 聴覚 / 時間知覚 / 音声知覚 / 空間知覚 / 心理物理学 |
研究実績の概要 |
テーマ別に以下に記す。 【A】チャンネル間処理の共通性の実証:昨年(H25)度から継続して,周波数内、周波数間、及び両耳間無音検出の閾値、/b/-/p/の同定反応を測定し、測定値間の相関分析を行った。実験参加者数を49名に増やして分析した結果、周波数間と両耳間無音検出閾値の相関は有意であった。これは両者に共通のチャンネル間処理が存在することを示唆する。一方,/b/-/p/の同定反応と無音検出閾値の間には有意な相関が無かった。 【B】チャンネル間処理の脳内メカニズムの同定:周波数内及び周波数間無音聴取時の脳内活動を,同一聴取者と同一の刺激を用いて聴性脳幹反応(ABR)と脳磁図(MEG)で測定するとともに,心理測定関数も測定した。その結果、ABR波形には明確なパターンが見られなかったものの,MEGと心理測定関数には共通した傾向が観察された。 【C】促音知覚と視覚におけるチャンネル間処理の検討:促音知覚に関しては、日本語母語者と英語母語者を対象として摩擦促音を含む音声に事象関連電位の測定を行った。その結果、両者の反応に違いがあることが分かった。視覚に関しては、空間周波数次元におけるチャンネル間処理をギャップ閾値測定により検討した。その結果、ギャップ前後の周波数が異なる場合は同じ場合と比べて閾値が上昇し,チャンネル間処理によりギャップ感度が低下することが示された。 以上の成果に関しては,Ear & Hearing誌とFrontiers in Neuroscience誌に論文が掲載され,日本音響学会秋季(2014年9月、札幌)及び春季研究発表会(2015年3月、東京)等で発表を行った。8月にはトロント市(カナダ)近郊でワークショップを開催し、科研メンバー全員が参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つのサブテーマともほぼ当初計画通りに進んでいる。昨年(H25)度は技術的な問題によりABRの測定が出来なかったが,今年度は実施することが出来た。ABRではまだ明確な結果が得られていないものの,平行して測定しているMEGと心理測定関数のデータと併せて分析することにより,チャンネル間処理の脳内メカニズムに関して有意義な示唆が得られると期待している。更に,海外連携研究者のWilly Wong准教授と共同して数理モデルの開発も進めており,行動実験,脳活動測定,モデリングの3面からチャンネル間処理を検討している。これまでの成果は国際誌や国内外の学会ですでに発表しており,研究開始2年目としては十分な成果を挙げたと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様,引き続き当初計画に沿って研究を進めていく。テーマ【A】では,知覚的学習による研究を新たに開始し,時間,空間,音声におけるチャンネル間処理の共通性に関する実験的証拠を積み上げていく。テーマ【B】では、同一刺激と同一聴取者によるABR,MEG,心理測定関数の測定を更に進め,数理モデルの研究と併せて,聴覚末梢から中枢、行動に至るチャンネル間処理の様態を明らかにしていく。テーマ【C】の視覚研究では,実画像に近い刺激を用いて空間周波数間チャンネル処理の機序を検討する予定である。来年度は5年計画の3年目にあたるので,これまでの研究成果を一度まとめ見直すとともに,次の研究のための新たな方向性を検討し始める。
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