研究課題
テーマ別に以下に記す。【A】チャンネル間処理の共通性の実証:知覚的学習の手法を用いて共通性を検証した。無音検出課題を2~3週間行う訓練群と全く行わない非訓練群で,その前後での/da/-/ta/の音声同定と弁別成績を測定した。その結果,音声同定での/da/-/ta/識別境界値には2つの群で有意な変化見られなかったが,訓練群では音声弁別成績が向上する傾向が見られた(田村ら, 2015)。【B】チャンネル間処理の脳内メカニズムの同定:周波数内及び周波数間無音聴取時の聴性脳幹反応(ABR)を測定した。その結果、周波数内あるいは周波数間に関わらず,無音長が10 msを超えると後続音のABR振幅が大きくなることが確認された(Mori & Iramina, 2015)。先行音長が50 msであることを考え合わせると,先行音のオンセットから60 ms以内では後続音のオンセット反応が抑制され,無音検出が困難になるという知見と一致する。【C】促音知覚と視覚におけるチャンネル間処理の検討:促音知覚に関しては、摩擦促音を含む音声に対するEEGを測定し,日本人話者と英語話者とで促音知覚の情報処理が異なることが示唆された。視覚に関しては、ギャップ前後の刺激の傾きが90°異なる場合のギャップ閾値を測定し、前年度の傾き差15°の場合と同様に,ギャップ前後の周波数が異なる場合は同じ場合と比べて閾値が上昇することが分かった。以上の成果に関しては,Acoustical Science and Technology誌等の論文にまとめ, 56th Annual Meeting of Psychonomic Society(2015年11月,Chicago),日本音響学会春季研究発表会(2016年3月,横浜市)等の学会で発表した。8月には福岡でワークショップを開催し、科研メンバー全員が参加した。
2: おおむね順調に進展している
3つのサブテーマともほぼ当初計画通りに進んでいる。ABRに関しては技術的な問題に重点的に対応したため,かなり測定が進んだ。その結果として,時間,空間,音声のチャンネル間処理の解明とその脳内地図の同定に関しては,全て査読付論文(Mitsudo et al., 2014: Mori et al., 2015; Mori & Iramina, 2015)を出版することが出来た。今年度はABRの測定に重点を置いたため,脳磁図(MEG)の測定が余り進まなかったのが反省材料である。促音知覚の研究も順調に進んでいる。視覚のチャンネル間処理に関しては,当初の計画よりやや遅れ気味であるが,実際の画像に近い刺激を使うなど新たなアプローチを試している段階であり,来年度には当初計画に近い水準の研究が可能と考えている。
テーマ【A】では,知覚的学習による研究に加え,音声を模した刺激による無音検出と有声・無声音同定能力の関連,単耳無音検出と両耳無音検出の関連などを新たに検討する。テーマ【B】では、同一刺激と同一聴取者によるABR,MEG,心理測定関数の測定を進めるとともに,ABRを用いて音声知覚の脳内処理の検討を行う。テーマ【C】の視覚研究では,実画像に近い刺激を用いて空間周波数間チャンネル処理の機序を検討する予定である。来年度は5年計画の4年目となるので,これまでの研究成果を基にして,広く聴覚時間分解能の理論展開やその検査法への応用など新たな方向性を具体的に検討する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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