研究課題/領域番号 |
25240030
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岩田 洋夫 筑波大学, システム情報系, 教授 (60184884)
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研究分担者 |
矢野 博明 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80312825)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / ロコモーションインタフェース |
研究実績の概要 |
位置を変えずに歩行運動を可能にする装置のことを歩行移動インタフェースと称す。歩行は人間にとって最も基本的な移動手段で、災害時における避難も徒歩が原則である。人間が自分の周囲の空間を認識する場合に、歩行運動に伴う外界の見えの変化は極めて重要な手掛かりであり、人間の空間認知に関する重要な研究テーマである。しかし、従来の避難シミュレーション研究では、この手掛かりがほとんど実現されていないのが実状である。本研究はこの課題に対して、歩行感覚と視覚を融合した避難シミュレータを開発し、避難行動における人間の特性を研究するための基盤技術を構築することを目的とする。 歩行運動に伴う外界の見えの変化は、人間が自分の周囲の空間を認識する場合に極めて重要な手掛かりになる。そのため、本研究では大型のスクリーンで観察者を覆う没入ディスプレイの技術を用いる。スクリーン面は観察者の目から等距離にあるのが望ましいので、その形状は球になるべきである。本研究ではTorus Treadmill上の歩行者に適用可能な、全周球面スクリーンと背面投射装置を開発した。背面から投影する場合は、多数のプロジェクタを用いて、球面を分割した領域に投影する必要があるため、その分割方法の最適化を行った。 都市空間の映像を生成する手法としては、CGを用いるものと、実写映像を用いるものがある。前者は任意の視点から見た風景が自由に生成できるが、リアルな風景を作成するのには、多大な労力と計算時間を要する。一方、後者は写真品質の映像が得られるが、視点の位置が固定されるという制約がある。本研究では、両者の長所を取り入れて、実写映像に処理を加え、全方向の歩行移動に対して都市空間の映像を生成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は以下の4つの研究項目によって構成される。 [研究項目1] 歩行移動インタフェース基盤技術の高度化: ①Torus Treadmillの発展型公転機構の開発 [研究項目2] 全周球面映像表示装置の開発: ②全周球面スクリーンと背面投射装置の開発 ③バーチャル都市空間の生成 [研究項目3] 歩行移動インタフェースと全周球面映像表示装置の統合: ④展示を通じた有効性と安全性の検証 ⑤公開実験用統合プラットフォーム開発 [研究項目4] 避難シミュレータの構築と、避難経路選択実験: ⑥バーチャルな災害状況の表示 ⑦避難経路選択に関する被験者実験 平成26年度はこれらのうち、[研究項目2]の実施を計画し、全周球面ディスプレイに映像を投影するプログラムを開発し、Torus Treadmillと映像を連動させることにより、バーチャルな空間を歩いて移動する感覚を生成することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は前述の[研究項目3]に進み、以下の研究を行う。 (1)展示を通じた有効性と安全性の検証:本研究では、Torus Treadmillと全周球面ディスプレイを統合したシステムの有効性と安全性を検証するために、公共の美術等で展示を行う。申請者は、JST/CREST「デバイスアートにおける表現系科学技術の創成」において、実験システムを日本科学未来館で常設展示を行い、展示を通じて研究を推進する手法を開拓した。本研究では、この知見に基づき、試作した装置を展示室に移設し、一般来場者が体験可能にする。 (2)公開実験用統合プラットフォーム開発:前述の展示を通じて、一般の体験者が歩行する際に問題となった点を抽出し、改良を加えたシステムを開発する。さらに、以下の機能向上を図る。 ・映像の立体視対応 両眼視差を用いた立体映像を全周球面ディスプレイに表示する。 ・実写映像を利活用したバーチャル都市空間のモデルの構築 立体視対応した都市空間の実写映像を取得し、その映像をTorus Treadmillと連動させることによりバーチャル都市の中を歩行可能にする。これらの機能を実装した公開実験用統合プラットフォームを開発する。
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