研究課題/領域番号 |
25240036
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鷲尾 隆 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00192815)
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研究分担者 |
伊庭 幸人 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30213200)
MICHAEL E.Houle 国立情報学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (90399270)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 統計的推定 / シミュレーション / 超高次元データ / 次元の呪い / 粒子フィルタ / 機械学習 / データマイニング |
研究実績の概要 |
本研究では、データ解析・シナリオ生成シミュレーションを最新の計算幾何学、モンテカルロ計算と融合し、数十万次元の統計的推定とシミュレーション技術への拡張を目指している。また、大規模問題におけるクラスタリング、シミュレーション等、大自由度問題へのこれら拡張技術の適用展開を目途としている。大阪大学の研究代表者の研究室と、研究分担者である国立情報学研究所のM.E.Houle客員教授、同じく研究分担者である統計数理研究所の伊庭幸人教授、研究協力者のオーストラリア・フェデレーション大学のKai Ming Ting教授等の共同研究体制を組んでいる。 研究代表者の研究室は主に超高次元観測データから、データの背後にある対象状態変化のシナリオを推定する粒子フィルタリングの研究開発を担当し、平成25年度に探求したプロポーザル分布を用いる方法において、平成26年度はその分布を最適化してより高精度な推定を行えるように拡張した。 国立情報学研究所M.E.Houle客員教授は、平成25年度に定式化した超高次元データ空間におけるデータ分布次元を、平成26年度はデータから高精度に推定しうるように手法拡張を行った。 統計数理研究所伊庭幸人教授は、平成25年度に開発した超高次元自由度空間での効率的シミュレーション手法を、平成26年度はさらに高効率化可能なシナリオ分布生成手法への拡張を行った。 オーストラリア・フェデレーション大学のKai Ming Ting教授は、平成25年度に超高次元データ空間のデータ分布から機械学習技術による推定を高精度化するデータ質量の理論を定式化したが、平成26年度はそのさらなる一般化を行った。 これらの手法は、何れもが本研究が目指す統計的推定とシミュレーション技術確立のための要素技術として必須のものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年間で数十万本質次元の空間の統計的推定・シミュレーション原理の開発と応用展開を行うことを目途とし、(1)超高次元に一層ロバストな統計的推定・シナリオ生成の一般的原理の探求、(2)上記一般的原理に基づく超高次元データからの統計的推定手法の開発、(3)上記一般的原理に基づく超高次元状態空間における確率的シナリオ生成手法の開発、(4)開発推定手法・シミュレーション手法の応用展開、(5)新たな国際的研究コミュニティーの構築の達成を目指している。 提案時の計画において、平成25年度は(1)、(2)、(3)の基礎的原理の探求に取り組み、かつ(5)にも取り組むこととしており、これらはいずれも順調に達成された。平成26年度には、引き続いて(1)、(2)、(3)の原理の拡張に取り組むと同時し、(5)もさらに推進することを予定していた。研究実績の概要にて述べたように、(1)、(2)、(3)について、平成25年度の実績に基づいたさらなる手法拡張を平成26年度に順調に行うことができた。まだ、平成25年度に引き続き、国際ワークショップを2回、オーストラリアの研究者の日本滞在による共同研究推進を1回実施し、(5)を順調に実現した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、現在までの達成度の項目で述べた(1)、(2)、(3)の原理を引き続き拡張すると共に、(4)開発推定手法・シミュレーション手法の応用展開への取り組みを開始する。そこでは学術的及び社会的に重要な大自由度系のデータ解析・シミュレーション問題を取り上げ、成果として各分野にスケーラブルで有用なツールを提供することを目指す。具体的に取り組む応用問題として、当初計画では以下の2つを挙げた。ただし、実際の取組みにおいては、データやシミュレーションモデルの入手しやすさ、社会的影響力の変化などを勘案し、よりインパクトの強い応用展開を図る予定である。 (4-1)地球気象観測データの類似検索・クラスタリング・異常検出・傾向分析・シミュレーション:従来の地球気象データやモデルでは、大気のカオス現象など大自由度系の高い本質次元を持つ挙動を簡略化しており、地球規模の詳細な気象変化の再現は困難である。ここに本研究成果を導入し、地球気象に関する類似検索・クラスタリング・異常検出・傾向分析等のデータ解析及び地球気象の大規模確率シミュレーションの飛躍的詳細化、高精度化、ロバスト化を狙う。 (4-2)個人トレース可能な災害時避難行動シミュレーション:近年、パーソントリップ調査を基に、人間集団行動を個々人の行動集積でモデル化可能になった。しかし個々の行動は多様なため、数十万人の集団は非常に高い本質次元を持つ大自由度系であり、高精度なシミュレーションは難しい。ここに本研究成果を導入し、集団行動に生じる様々な現象や確率を高精度推定することを狙う。 また、(5)新たな国際的研究コミュニティーの構築についても、引き続き国際ワークショップの開催や海外からの共同研究者の招へいを遂行して強化する予定である。
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