研究課題/領域番号 |
25240038
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
畑 豊 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 教授 (20218473)
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研究分担者 |
前中 一介 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70173721)
小橋 昌司 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00332966)
森本 雅和 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10305683)
藤田 孝之 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50336830)
倉本 圭 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70524627)
上浦 尚武 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80275312)
新居 学 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80336833)
山川 烈 一般財団法人ファジィシステム研究所, その他部局等, 教授 (00005547)
酒井 良忠 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90397802)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | ソフトコンピューテング / ファジィ理論 / 健康診断データ解析 / 疾病 / クラスタリング |
研究概要 |
本年度は年毎に区切られた健康診断データから得られた様々な検査値と疾病の状況を用いてデータの解析を行った。①姫路市医師会との共同研究により、厚生労働省が報告している国民健康・栄養調査のデータ及び姫路市での健康診断データ3万人/年以上の健康診断データに対してのデータ分析・解析を通常の統計解析により実施した。その結果、姫路市特有の傾向があることが判明し、姫路市医師会で報告した。②本研究の課題をファジィ集合の利用により実施した。この解析では、疾病前のデータと疾病後のデータに対して、個人リンクを考慮することなく年度の集合として取り扱った。健康診断では様々な検査が行われているが,その生値をファジィ集合へと変換することで,異なる指標間での演算や比較を可能にした。またファジィメンバシップ関数を日本人間ドック学会の基準に基づき構築し,正常さを示すファジィ所属度として算出した。これにより、疾病パターンのクラスタリングが可能になった。実データとして厚生労働省が報告している国民健康・栄養調査のデータ及び姫路市での健康診断データを使用して、全国と姫路市の検査値のファジィ所属度を求めた。 健康に関する総合的な指標や疾患に関する指標をこの所属度の単純な演算により求めることができる。これによって代表的な疾病に関する指標がファジィ論理上で計算できると考えている。そして、疾病のクラスタリングは、この演算方法を開発することで可能であると考えている。例として、脂質異常症の指標は,性別で年代にごとのリスクが異なり,指標による結果はその定説と一致した。疾患指標を平均値から算出した結果は,最小値によって算出した結果とほぼ同様の結果が得られたが,最小値を用いた指標の方が年齢による差が僅かに大きくなった。このように疾病に関する総合的な値のインデックスを計算するシステムの基盤がファジィ論理上で開発できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を、姫路市医師会との共同研究として実施し以下のことが達成できた。準備:研究環境として、兵庫県立大学内に健康診断データ解析の専用のシステム(セキュリテイ強化のためインターネットと遮断)を構築した。ここには、高速LANと共にデータベースシステムを完備させ、このシステムを用いて以下の研究を達成できた。通常の統計処理の実施:厚生労働省が報告している国民健康・栄養調査のデータ及び姫路市での健康診断データを使用して、全国と姫路市の検査値を通常のχ2乗検定やオッズ比等の方法で比較・解析した。その結果、健診データに姫路市特有の特徴があることが判明した。この事実を姫路市医師会との会議で報告し、今後の解析の方向性を議論した上で以下の研究を実施した。 以上のことを基盤として以下の本年度の研究課題に取り組み結果を得た。 課題①発病前のデータと発症後のデータ統合:本年度は年毎に区切られた健康診断データから得られた様々な検査値と疾病の状況を用いてデータの解析を行った。この課題は解決できた。 課題②時系列データ解析にソフトコンピューテング技術を加えて、①により統合されたデータから各疾病パターンのクラスタリング:姫路市医師会との共同研究により、3万人/年以上の健康診断(健診)データに対してのデータ分析・解析を実行した。様々な検査項目間での比較を行えるように検査データをファジィ集合へと変換することにより,健診結果の評価を容易にする方法を提案できた。また,異なる検査項目を総合的な一つの指標とすることで,個々の検査結果に対する評価でなく,(1)健診結果全体の総合的評価(2)各疾病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症、脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞)の評価指標を計算する枠組みを開発できた。 研究結果の具体的内容は、姫路市民の市民啓発に使用される。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果を用いて、平成26年度は以下の推進方策をとる。 姫路市医師会との共同研究で、患者のリンク付けが可能な健診データを使用し以下の研究を行う。 1.時系列解析:健診データは長くても10年間のデータであり、そのサンプル点が非常に少ないため、健診データ専用の時系列解析法の開発が必要である。この方法をソフトコンピューテング技術を活用して開発する。 2.医師の知識を取り入れた発症の潜在的機構解明と疾病の代表パターンの構築:疾病代表パターン構築には決定木を使用する。各疾病に対して一般化された木構造を生成するために, ファジィ決定木の構造学習に遺伝的アルゴリズムを適用した決定木生成手法を使用する。遺伝的アルゴリズムは、決定木の構造学習に用いられる。染色体で決定木の構造をコーディングして、学習中に複数の候補解を獲得する。この候補解の中で、医師が発症の機構を表現していると認めたものを解として選択する。検診データ:身体計測(身長、体重、腹囲、BMI)、血圧(最高値、最低値)、尿(尿糖、尿タンパク)、血液(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、AST、ALT、γ-GTP、GLU,HB-A1c、UA、CRE)の合計18の属性からなる時系列特徴値から、低次元でコンパクトかつ精度の良いファジィ決定木を獲得できると考えている。疾病代表パターン構築にはファジィ決定木を使用する。各疾病に対して一般化された木構造を生成するために, ファジィ決定木の構造学習に遺伝的アルゴリズムを適用した決定木生成手法を使用する。遺伝的アルゴリズムは、決定木の構造学習に用いられる。ここでは、まず決定木の構造と時系列ファジィ分類ルールの獲得を行い、獲得されたルールを医師の知識と比較し、最も妥当な決定木を採用して、生活習慣病の疾病代表パターンを構築する。
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