研究課題/領域番号 |
25240045
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河野 崇 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (90447350)
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研究分担者 |
藤田 昌宏 東京大学, 大規模集積システム設計研究センター, 教授 (70323524)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シリコン神経ネットワーク / 脳型情報処理 |
研究実績の概要 |
脳神経系には多種多様な発火特性を持つ神経細胞が存在し、相互情報交換により高度な情報処理を行っている。そのような情報処理を模倣したシリコン神経ネットワークを実現するための基盤として、多様な神経活動を再現できるシリコンニューロンモデルのライブラリが重要である。相互情報交換を調整する学習機能とが重要である。前者について、既に開発済みの2変数シリコンニューロンモデル(ホジキン分類クラスI,IIが実現可能)を元に、発火周波数適応、楕円バーストなどの自発バーストが可能な3変数モデルを開発し、ライブラリを拡張した。 神経細胞間の情報伝達効率が適切に変化することによって、脳神経系の情報処理のもう一つの基盤である学習が行われる。デジタル演算回路向けのヘブ学習則及び非対称性STDP学習則を設計しFPGA上に実装した。既に開発済みのFPGA全結合シリコン神経ネットワークへ組み込み、自己連想記憶及びシーケンス記憶タスクを実行させることにより動作検証を行った。へブ学習則を用いてパターンを記銘することにより、相関学習を用いた場合に比べて、自己連想記憶タスクにおいてよりノイズの多い入力から正しいパターンを想起することができることを示した。また、非対称性STDP学習則を用いて、パターンを順序正しく提示して記銘することによりパターンとその順序を記憶させることができることも示した。 また、広帯域メモリを直結した単一FPGAチップ上で、1000ニューロン規模の全結合ネットワークを実現することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリコンニューロンモデルライブラリの拡充については、当初Pospishilらによる大脳及び視床の神経細胞モデルを取り入れる予定であったが、シリコン神経ネットワークシステム全体の評価に重要な学習則回路の設計を優先させた。全結合シリコン神経ネットワークにおける連想記憶タスクや順序記憶タスクの基本動作については、本年度作成したモデルで充分であり、Pospishilらによるモデルについては来年度扱う。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を基に、大規模シリコン神経ネットワークの構築に必要な基盤技術の開発及び、シリコンニューロンモデルライブラリの拡充を行う。前者については、単一FPGAチップ上で実現できるシリコン神経ネットワークの規模には制約があるため、複数のFPGAチップを結合してシステムを構築する必要がある。このバス規格を検討する。後者については、Posipishilらによるモデルを取り込むと共に、昆虫の神経細胞などより多様な神経活動のサポートを目指す。 また、シリコン神経ネットワークにおける情報処理タスクについても、ネットワークトポロジ、神経モデルの両面に注目しながら研究を進め、連想記憶やパターン弁別などへの応用を検討する。
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