研究課題/領域番号 |
25240047
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
仁木 登 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (80116847)
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研究分担者 |
河田 佳樹 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (70274264)
梅谷 啓二 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (50344396)
中野 恭幸 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (00362377)
花岡 淳 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (00452243)
高橋 雅士 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20179526)
村田 喜代史 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20127038)
伊藤 春海 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 特命教授 (40026943)
阪井 宏彰 京都大学, 医学研究科, 非常勤講師 (50362489)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺3次元ミクロ形態 / 肺胞毛細血管 / 3次元ミクロ病態(肺がん・COPD・間質性肺炎) / 放射光マクロCT / 薄型蛍光板と拡大光学系 / 大容量3次元画像解析 |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患,間質性肺炎,肺がんなどの疾患の3次元ミクロ病態の解明は未知の分野である.肺末梢構造の観察は病理学において視野範囲(FOV)の制限された組織スライス画像を用いて実施されているが,この30-40年間で格段の進歩がないと言われている.ここでは,放射光CTの検出器を高性能化(目標値:空間分解能3μm,FOV50mm)し,ヒト肺標本の血管系(細血管・毛細血管(内径10μm))にナノ粒子造影剤を注入して正常標本や疾患の進展度別標本をイメージングし,これらの3次元ミクロ形態画像(2-3TB/標本)から肺の基本単位である肺2次小葉(大きさ10-30mm)を中心にして正常形態や病態の発生・進展過程をコンピュータ解析をする.研究計画は1.放射光CT検出器の高性能化の研究開発(最終目標は受光面サイズ横36mm×縦24mmで画素サイズ3μmのX線検出器を開発し,オフセットCTスキャンにより視野を拡大し横視野50mmの画像を撮影する)2.ナノ粒子造影剤を用いた伸展固定肺標本作製法の開発,3.大容量3次元ミクロ画像データベースの構築,4.3次元ミクロ形態の画像解析の技術基盤の構築,5.3次元ミクロ形態の解明からなる.本年度は,データベース構築に向け協力医療機関の倫理審査委員会の承認を得て研究計画通り推進させた.放射光CT検出器に薄型蛍光板と拡大光学系を導入して高分解能化に成功した.血管造影のためのナノ粒子造影剤を用いた標本作製実験,非実質構造(肺血管,気管支・肺血管周囲組織,小葉間隔壁,肺胸膜)構造の3次元ミクロ形態解析法の開発を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主要な成果は次の通り. ・大容量3次元ミクロ画像データベース構築に向け,協力医療機関の倫理審査委員会の承認を得て標本作製法の開発を推進した. ・SPring-8放射光CTに実装されている検出器は蛍光板(厚さ10μm)でX線像を可視光像に変換し,光学レンズでCCDカメラ(1000万画素(4000x2642素子), 画素サイズ5.87μm)に結像する.高空間分解能化には蛍光板内の可視光散乱の軽減とCCD画素サイズの高解像度化が重要となりため,高効率な散乱抑制をもたらす材質を採用した蛍光板の薄型化(厚さ6μm), 36M画素X線検出器(35.9 mm ×24.0mm [7360×4912素子],画素サイズ:4.88 μm)を開発した,撮影系に拡大光学レンズを組み込んだ空間分解能測定評価の基礎実験を行い,現行の到達空間分解能10.4μmから4.2μm(視野幅22.7mm)に向上させることに成功した. ・毛細血管撮影のためのナノ粒子造影剤として金ナノ粒子,バリウムナノ粒子造影剤(電子顕微鏡計測径:数百ナノm)を用いて費用対造影効果に優れる試薬評価実験を行い,均一なナノ粒子径を有する臨床用造影剤を用いた標本作製法の開発を進めた. ・ガス交換をつかさどる肺実質構造(肺胞,肺胞道,肺胞嚢,肺胞隔壁などの組織と空気から構成)と非実質構造(肺血管,気管支・肺血管周囲組織,小葉間隔壁,肺胸膜)の空間配置,肺細血管に繋がる肺細血管(細静脈,細動脈: 径100μm未満)の空間位置に注目した血管走行追跡法を開発し,肺ミクロ3次元形態を明らかにした. 本研究「高分解能放射光造影CTによる肺3次元ミクロ病態の解明」に関する平成26年度の研究成果は学会発表7件(国際会議:2件,国内:6件(内招待講演:3件,優秀賞:1件)である.放射光CT検出器の高性能化は空間分解能4.2μmを実現し,この撮影系による高精度肺ミクロ構造のイメージングに期待が持たれる結果を得ており,申請時の計画通り概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,(1) 放射光CT検出器の高性能化の研究開発,(2) ナノ粒子造影剤を用いた伸展固定肺標本作製法の開発,(3) 大容量3次元ミクロ画像データベースの構築,(4) 3次元ミクロ形態解析の技術基盤の構築,(5) 3次元ミクロ形態の解明からなり,現在まで計画通り概ね順調に進展している.今後の研究の推進方策は次の通りである. (1) 最終目標は,受光面サイズ横36mm×縦24mm,画素サイズ3μmのX線検出器を開発し,オフセットCTスキャンにより視野を拡大し視野幅50mmの画像を撮影することである.昨年度は,薄膜蛍光板による36M画素X線検出器の開発と撮影系に拡大光学レンズを組み込んだ撮影系の開発により到達空間分解能4.2μmを実証した.今年度は視野幅拡大を可能にするオフセットスキャン撮影法の開発に取り組む. (2),(3) ナノ粒子造影剤を用いた伸展固定肺標本作製法の開発: 適切な混合比率のナノ粒子造影剤を肺動脈から注入した後,どれくらいの比率の固定液を径気管支から注入しどのくらいの時間浸漬させることによって肺末梢構造すべてのミクロ形態を維持させることが可能となるのか作製時に関わるパラメータの適値探索を継続して実施する. (4) 肺3次元ミクロ形態の空間配置として細気管支・肺胞道の分岐様式,肺胞の分布様式,肺細血管ネットワーク,肺胞毛細血管ネットワークの抽出法の精度評価を行い高精度化を継続して進める. (5) 呼吸細気管支から肺実質への病変の進展ルートとして高次呼吸細気管支,肺胞道,肺胞嚢,肺胞と次数に従う場合と呼吸細気管支に備わる背中合わせ肺胞から周囲肺実質へ向かうバイパス的な深達進展が予想される.これらの仮説を3次元肺ミクロ形態の画像解析に基づいて検証する.
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