研究課題
第4の南極底層水生成域であるケープダンレー沖においては、今まで係留系観測により取得してきたADCPの散乱強度データから、ポリニヤ出現時には海中で大量のフラジルアイス生成が生じていることが明らかになり、これが高海氷生産システムを生む重要なメカニズムであることが示唆された。また、このデータも検証データにして、フラジルアイスを検知する衛星マイクロ波放射計のアルゴリズムを開発し、南大洋全域の海氷生産量マッピングに適用した。一方、バイオロギング(アザラシに測器を付けて観測する手法)データから、ケープダンレーの上流(東側)のプリッツ湾においても、衛星から見積もられる海氷生産量とよく対応する塩分・密度の増加があり、底層水、もしくはケープダンレー底層水の前駆水となるような高密度水が生成されていることが明らかなった。ただし、プリッツ湾の背後にあるアメリー棚氷の融解により、高密度水の生成が抑制され、そのためケープダンレー沖ほどの大量の底層水形成には至らないことも同時に示唆された。ビンセネス湾沖では、係留系観測や船舶・アザラシデータから、低密度ながらもこのセクターではもっとも顕著な底層への沈み込みが生じていることが示唆された。衛星マイクロ波放射計SSM/I, AMSR-E, AMSR2により過去30年間の全南極海における海氷生産量を推定し、南極底層水の変動との関係を調べた。特に、第3の南極底層水生成域であるアデリーランド沖においては、2010年2月に起こったメルツ氷河の大崩壊によって、海氷生産量が半減したことが明確になり、それによって底層水生成が大きく減少もしくは停止したことが示唆された。以上より、東南極での底層水形成とその変動が明確になり、底層水形成やその変動は海氷生成とともに氷河・棚氷からも大きな影響を受けていることが示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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