研究課題
苫小牧サイトと天塩サイトでは、渦相関法やチャンバー法によるCO2フラックス観測、植生遷移と植物バイオマス蓄積量のモニタリングを行い、データとして蓄積した。苫小牧サイトにおいて、撹乱後の毎年のバイオマス調査によって得られた遷移とバイオマス蓄積をまとめた。 撹乱直後はエゾイチゴが優占した下層植生バイオマスが増加したが、撹乱後6年頃から、オオアワダチソウが優占した。また、その頃からシラカンバなどの落葉広葉樹(以降、高木)が増加した。高木バイオマス増加に伴い、下層植生のバイオマスが減少し、総バイオマスの増加は頭打ちとなった。攪乱後の純一次生産量(NPP)は、攪乱前の3分の1以下にとどまった。天塩サイトにおいて、森林伐採後の更新方法が森林のバイオマス蓄積量に与える影響を検討した。天然更新の平均炭素貯留量は8.41tC/haであり、ササと表層土壌を剥ぎとった後にカラマツを植林した場合(14.4 tC/ha)に比べて少なかったが、ササを筋状に刈り払い植林を行った場合 (3.2 tC/ha)に比べて大きかった。表層土壌とササの剥ぎ取りは、施業時のCO2の大放出が懸念されるが、森林造成やバイオマス蓄積の観点から有用な手法であることが分かった。乱流モデルの開発において、群落乱流の特徴である間欠的に生じる大規模な乱流現象にともなう輸送過程を、群落多層キャノピーモデルにおいて適切に表現するため、鉛直輸送に関わる次クロージャーモデルを導入するための予備検討を行った。いくつかのクロージャー仮定に従い、平均場の他に、速度とスカラー量についての二次モーメントの診断式を合わせて解くことにより、鉛直方向への運動量やスカラーの輸送量を算出するコードを開発した。このコードで予備計算をしたところ、従来の勾配-拡散型のパラメタリゼーションに比べ、群落内の各統計量の鉛直プロファイルがより現実的に再現されることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
苫小牧サイトと天塩サイトにおけるCO2フラックスや植物のバイオマス蓄積、測定データの整理・解析が順調に進められているため。平成25年度に予定していた新たな研究サイト(苫小牧B)の立ち上げが、一部の撹乱により困難になったものの、バイオマスの測定によって炭素収支の評価が可能であるため、研究の進捗には問題ないと考えられる 。乱流モデルの開発も進められ、森林群落内の各統計量の鉛直プロファイルの再現が可能となった。
当初の予定通り、苫小牧と天塩の両サイトにおいて、CO2フラックス、植物のバイオマス、LCTFカメラ、デジタルカメラ、分光放射計のデータ(または画像)の蓄積を続け、カメラや放射計から得られた植生指数とタワー、チャンバー、バイオマス変化から算出された炭素動態の結果との関係を検討する。また、苫小牧のBサイトにおいて、種組成と植物バイオマスの測定を行い、純一次生産量(NPP)の評価により、撹乱の種類が種組成やバイオマス回復に及ぼす影響を検討する。北海道大学と国立環境研究所との間で一部のデータの共有化を行い、渦相関法とチャンバー法によるCO2フラックスのクロスチェックを効率的に進められる体制をつくる。さらに、撹乱影響の数値シミュレーションもすすめ、撹乱の有無でCO2フラックスがどのように変わるかの数値実験を行う。このように得られた情報をもとに、サブテーマ4の「大規模撹乱後の植生遷移における炭素動態の変化の解明」に取り掛かる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件)
Soil Science and Plant Nutrition
巻: 61 ページ: 61-75
10.1080/00380768.2014.990349
Ecological Informatics
巻: 26 ページ: 54-60
10.1016/j.ecpoinf.2015.01.005
Biogeosciences
巻: 11 ページ: 5139-5154
10.5194/bg-11-5139-2014
巻: 11 ページ: 2411-5424
10.5194/bg-11-5411-2014
Agricultural and Forest Meteorology
巻: 197 ページ: 26-39
http://dx.doi.org/10.1016/j.agrformet.2014.06.002