研究課題/領域番号 |
25241006
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
須藤 健悟 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40371744)
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研究分担者 |
宮崎 和幸 独立行政法人海洋研究開発機構, 基幹研究領域・地球表層物質循環研究分野, 研究員 (30435838)
伊藤 昭彦 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 研究員 (70344273)
石島 健太郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 基幹研究領域・地球表層物質循環研究分野, 研究員 (90399494)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大気化学 / 陸域生態系 / メタン / 亜酸化窒素 / 大気酸化能 |
研究実績の概要 |
陸域生態系モデルVISITを用いて、陸域におけるCH4とN2Oの交換フラックスの全球分布を1900年から2010年までについて推定し、土地利用変化、気象要因等からのCH4フラックス等についても精緻化を行った。N2Oのフラックス推定については、耕作地への窒素肥料投入量の表現の向上の他、大気化学モデルとの連携により大気からの窒素沈着等の影響を考慮するように、モデルを高度化した。また、VISITで計算される各種フラックスを大気化学モデル、N2O化学輸送モデルへ入力し、CH4・N2Oの大気中濃度の診断実験をそれぞれ行い、衛星観測や航空機観測の各種データを用い検証を行った。また、OHの全球分布(大気酸化能)についても、CHASERモデルのオゾン化学反応過程の改良を行った上で、過去の再現・診断計算を開始し、オゾン・CO・NOxなどの関連化学種の検証を実施した。さらに、OHの変動要因(水蒸気、オゾン、紫外光、NOx)を分離・定量化するための診断実験の準備を行い初期的な実験を開始した。大気化学同化システム(CHASER-DAS)については、雷からのNOx生成量の逆推定を行い(Miyazaki et al., 2013)、OHの全球分布推定やエミッション変動要因の特定に向け、定量的理解が向上した。 N2O化学輸送モデルについては、まず、成層圏での大気放射や光解離反応スキームの改良を行い、N2O消失過程表現を向上させた。そのうえで、VISITにより農耕地・森林等の放出源(あるいは硝化・脱窒等のプロセス)毎に区別して出力されたN2Oフラックスをモデルに入力し、個別トレーサーとして濃度を計算し、結果の検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、陸域生態系モデルVISITや大気化学モデルCHASERの改良および検証は計画通りに実施された。また、VISITによる過去の長期フラックス推定も計画通りに行われ、大気化学モデルを利用したフラックス検証も予定通りであり、想定される成果は得られた。さらに、大気化学同化システム(CHASER-DAS)を用いた大気化学場やエミッションの逆推定も初期的な結果(Miyazaki et al., 2013)が得られ、OH変動に関連する大気化学場変動の理解が大きく向上した。N2O化学輸送モデルを用いたN2O収支の解析についても、モデル表現の改良や、エミッション種別ごとのN2O変動寄与の推定が行われ、予定通り研究が進められた。
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今後の研究の推進方策 |
陸域生態系モデルによるフラックス推定については、大気化学モデルCHASERを援用した検証をさらに詳細に行う。また大気からの窒素沈着変動が陸域生態系応答を介してどのように大気へのフラックス変動にフィードバックするか定量的に考察を行う。OH全球分布変動については、CHASER化学モデルによる感度実験を行い、各種変動要因のさらなる分離・定量化を行うとともに、データ同化システム(CHASER-DAS)により、過去のOH変動をさらに高精度で推定し、メタンの収支解析に利用する。N2Oについては、温暖化による大気循環の変化に伴う成層圏・対流圏間交換の変動や、成層圏オゾンの減少によるN2O光解離への影響について、感度実験・解析により詳しく検討していく。
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