研究課題
これまでの研究で精緻化・改良が進められた大気化学モデル(CHASER)およびエミッションデータを用い、メタン(CH4)および亜酸化窒素(N2O)の全球収支の再評価を実施した。まず、メタンの消失過程を支配するOHラジカルの全球分布に着目し、長期・年々スケールのOH変動要因を分離する感度実験を実施し、各要因を定量的に整理した。この結果、2000年以降のOH変動には、オゾン(O3)やバイオマス燃焼起源の一酸化炭素(CO)が大きく関与しており、最近の2010年以降では、オゾンや雲の変動が継続的にOHを増加させていることが明らかになった。OHについては、各種関連気体の衛星観測データを用いたデータ同化手法(CHASER-DAS)による全球分布推定も実施し、OHとの反応によるメタン消失量とその変動について、より精度の高い知見を得ることができた。一方、本研究の陸域生態系モデルVISITによるBVOCs(植物起源VOCs)の推定に関し、ホルムアルデヒド(HCHO)の衛星観測を用いた詳細な検証を実施した。この結果、VISITによるイソプレン等のBVOCs発生量の推定は、最大で60%程度の過大評価である可能性が指摘された。最後に、このような結果をモデル・エミッションデータに導入・反映し、過去数十年間におけるCH4・N2O変動の再現実験を実施し、観測との比較・検証の上で、各種変動要因の寄与を分離・定量化し、まとめた。特にCH4については、CH4自体の濃度上昇に加え、窒素酸化物(NOx)の濃度上昇や、気候変動(温暖化傾向)による水蒸気・雷NOx発生の増加がOHを変動させ、メタンの全球平均濃度や収支に大きく寄与していることが示された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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