研究課題/領域番号 |
25241011
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
益谷 央豪 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40241252)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 損傷乗り越え複製 / DNAポリメラーゼ・イータ / PCNA / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
DNA損傷による複製阻害を回避する機構の制御におけるPCNAの翻訳後修飾の重要性が明らかになってきている。すなわち、PCNAの164番目のリジン(K164)が、モノユビキチン化されることによりTLSが活性化され、ポリユビキチン化(K63)されることによりテンプレートスイッチと呼ばれる未解明の機構が活性化されると考えられている。しかし、PCNAがホモ3量体であることによる翻訳後修飾の多様性がもたらす影響はほとんど明らかにされていない。そこで、本年度は、PCNA3量体の複数のサブユニットが同時にマルチ翻訳後修飾されることの生理的意義を解析するためのヒト細胞系を構築した。具体的には、K164をアルギニンに置換した変異体PCNA[K164R]を導入したヒト細胞株を作成し、この細胞内では、内在性PCNAと外来変異PCNAが混合した3量体を生じることを示した。即ち、この細胞内を用いることにより、PCNA3量体中の複数のサブユニットが同時にマルチ修飾されることができない状況を作り出し、種々のDNA損傷に対する感受性や細胞周期の進行等の細胞応答を解析することが可能となった。さらに、上記の解析と併せて、DNAポリメラーゼ・イータによるPCNAのモノユビキチン化亢進の分子機構と生理的意義の解析を開始した。具体的には、細胞レベルで、DNAポリメラーゼ・イータを強制発現させることにより亢進されるPCNAのモノユビキチン化の内容を解析し、モノ及びマルチユビキチン化の促進であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト細胞中で外来性PCNAと内在性PCNAが効率よく混ざり合った3量体を構築させることが本課題の最初のクリアすべき課題であったが、安定的に発現する細胞株を作出することにより、関門をクリアし、順調に計画を進めることが可能となった。その結果、マルチユビキチン化の重要性を世界で始めて示す成果を得ることができたため、その成果の検証に時間を費やし、当初の計画を延長して繰り越したが、当初の計画以上の成果に繋げるための措置であり、計画は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
世界に先駆けてマルチユビキチン化の重要性を見い出すことができたので、引き続き、計画に従って、その下流で働く仕組み及び上流の制御機構を含めて、DNA損傷による複製阻害を回避するメカニズムの包括的理解を推し進める。
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