研究課題
独立のがん組織で共通に認められる遺伝子変異を探索することを目的に、複数のがん組織のゲノムワイドな突然変異解析を行った。0.15%臭素酸カリウムを16週間飲水投与したMutyh欠損マウス2個体から小腸に発生した腫瘍3例と対照となる正常組織として同一個体の心臓からゲノムDNAを抽出し、全エクソーム解析を行った。また、同様に酸化ストレスを負荷したTrp53遺伝子欠損マウス1個体から小腸に発生した腫瘍1例と小腸正常組織の全エクソーム解析を行った。全てのサンプルで平均スループット深度は100以上、×10カバレッジは92%以上、マップ可能リードは99%以上であり、シーケンスおよびマッピングは良好な条件で行われた。腫瘍特異的変異のスペクトルを解析したところ、Mutyh欠損マウスではG:CからT:Aへの変異が30%以上含まれおり、各個体間で共通に持つ変異(B6マウス系統が持つ多型)の中で同変異が占める割合は約8%であったことから、このマウスの組織に生じた体細胞突然変異に特徴的であると考えられた。3つの腫瘍でそれぞれ105、100、67遺伝子にアミノ酸置換変異が検出され、6遺伝子は3つの腫瘍全てに、9遺伝子は3つの腫瘍のうち2つで共通していた。大腸がんのドライバー遺伝子として知られているβカテニンをコードするCtnnb1遺伝子のエクソン3に非同義置換33S>Y (17207C>A)、37S>Y (17219C>A)が検出された。この結果は以前我々が行った同系統のマウスを用いた腫瘍のがん関連遺伝子の変異解析の結果とよく一致する。Trp53マウスの腫瘍特異的変異の中にはApc、Xrcc5(Ku80)、Llgl1遺伝子などが含まれていた。今回の解析で共通に変異が見つかった遺伝子の中には、染色体安定性に関与するものが複数あり、今後これらの遺伝子変異の発がんへの関与について詳細な解析を行う必要がある。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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