研究課題/領域番号 |
25241013
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
田辺 信介 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (60116952)
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研究分担者 |
岩田 久人 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10271652)
野見山 桂 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (30512686)
磯部 友彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (50391066)
国末 達也 鳥取大学, 農学部, 教授 (90380287)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有害化学物質 / ペット動物 / 代謝 |
研究概要 |
1)有機ハロゲン化合物および水酸化代謝物による汚染の実態解明: ペットのイヌ、ネコの血中有機ハロゲン化合物とその代謝物を分析した結果、イヌでは高塩素化OH-PCBsが、ネコでは低塩素化体が高濃度であり、イヌのPCBs代謝力はネコよりも強いことが推察された。イヌ、ネコ血中PBDEsは両種ともにBDE209が主要異性体であり、餌やグルーミングによるハウスダストからの経口曝露が示唆された。ネコ血中にはキャットフード由来と考えられる高濃度のOH-PBDEsが残留しており、天然生成物の取り込みやPBDEs、MeO-PBDEsの代謝が示唆された。ネコは、フェノール化合物の代謝を担うグルクロン酸抱合能が欠損しているため、水酸化代謝物のハイリスクアニマルであることが推察された。 2)甲状腺ホルモンの分析と影響解析: 本年度は当初計画していたイヌ・ネコ血清中の総T4,T3の分析に加えて、遊離T4とT3を計測するために分析法の開発を進めた。 3)in vitro試験による代謝能の解析: ネコの肝ミクロソームにPCBsを添加した結果、低塩素化PCBsの優先的代謝が明らかとなった。一方、高塩素化OH-PCBsの生成は認められなかった。イヌでは3-8塩素化の多様なOH-PCBsが代謝され、ネコに比べ高濃度のOH-PCBsが検出されたことから、イヌのPCBs水酸化代謝能はネコに比べ強いことが示唆された。 イヌおよびネコの肝ミクロソームにPBDEsを添加したところ、水酸化代謝物の生成は確認できなかった。しかしながら、イヌでは2,4,5-TBPと2,4,6-TBPが、ネコでは2,4,6-TBPが検出された。このことから、PBDEs代謝はエーテル結合の開裂によるブロモフェノールの生成が主要経路と推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度の研究計画で示した、「有機ハロゲン化合物および水酸化代謝物による汚染の実態解明」および「in vitro試験による代謝能の解析」は、試料分析および代謝試験ともにほぼ達成され、イヌ・ネコにおけるPCBs・PBDEsおよび水酸化代謝物の汚染実態解明と曝露経路の推定、さらにはイヌとネコのPCBs・PBDEs水酸化代謝能や抱合体化能に差異があること等を明らかにした。 「甲状腺ホルモンの分析と影響解析」 については、ペットのイヌ・ネコの血清中甲状腺ホルモン(総T3、T4、rT3)レベルを測定したが有機ハロゲン化合物および水酸化代謝物との関係を解析し影響を検証するまでには至らなかった。このことは、汚染物質の影響が強く懸念される遊離体甲状腺のホルモンの分析が必要なことを導入した。そこでH26年度は新たに開発した遊離体のT4,T3の分析も試み、甲状腺機能亢進症など甲状腺機能障害や各種疾病との関連性の解析を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き動物病院の協力を得て採取したペットのイヌ・ネコの血中有機ハロゲン化合物および水酸化代謝物を分析する。さらに比較対象として、研究協力者によってポルトガルで集められたイヌ・ネコ血清も分析に供試する。これらの結果に加えて報告事例のある米国の汚染実態と比較し、国内ペットの汚染状況と地域特性を明らかにする。分析対象物質も拡大し、DBDPE、BTBPE、DPなどのハロゲン化難燃剤、およびリン酸エステル系難燃剤等の代替難燃剤による汚染実態解明も試みる。またペットフードやハウスダストを分析し、ペットに対する汚染物質曝露経路と体内負荷量を解析する。 愛媛大学の生物環境試料バンク(es-BANK)に冷凍保存されているイヌおよびネコの生体組織(皮下脂肪、肝臓、血液、脳、腎臓、胆嚢)を分析に供試し、血中TTRを介した水酸化代謝物の体内分布を解明する。とくに脳組織に注目し、TTRを介した水酸化代謝物の血液脳関門の通過と脳移行について解析する。 強い代謝能を持つ食肉目のPCBs体内変化を明らかにするため、ビーグル犬にPCBsを投与してin vivo動態試験を実施する。既知のPCBs異性体数種を投与後、経時的に血中水酸化代謝物を分析し、その動力学モデルを構築する。曝露終了後に各臓器・組織中の親化合物および水酸化代謝物を分析し、肝臓でのPCBs代謝と血中TTRを介した水酸化代謝物の体内分布を解析する。また、血中甲状腺ホルモン濃度の経時変化も検証する。さらに、マイクロアレイ法および定量的PCR法により各臓器における遺伝子発現プロファイルの変化を網羅的に解析し、甲状腺機能撹乱メカニズムの解明とリスク評価のための科学的根拠を提示する。
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