研究課題
基盤研究(A)
自然発生突然変異を蓄積検出を、ゲノムDNAがほ乳類でもっとも高精度に解読公開されているC57BL/6Jマウスを用いて、新たに生じた変異がホモ接合とならない交配から開始した。第1世代総数38個体を用いた14独立家系(♂1♀2交配10家系、♂1♀1交配4家系)とから、12家系において♂68♀69の第2世代が得られ、さらに2家系ずつ交配し独立な6分枝家系A~Fから第3世代総数264匹を得た。さらに独立16分枝家系を第3世代交配から得つつあり、第4世代106匹が現時点で得られた。全個体を凍結保存しいつでも突然変異検出可能な状態としている。変異検出のための高速高精度化に向けたENU変異マウスライブラリーからの次世代シーケンサーを用いたexome解読からの発見発見数が2000を越えた。当初の計画以上のスループットが費用対効果も含め達成された。またライブラリーから発見した変異の生物学的効果についても初年度4報の原著論文を発表した。分担者茶野が発見した致死突然変異を抑制する修飾遺伝子についても該当個体の次世代シーケンシング解読と変異検出が完了した。大家系における変異蓄積解析システムも独自に考案開発し、実際に分担者大野によって確立された酸化ストレス高感受性マウス8世代100匹以上の大家系に応用し、のべ297変異を検出し効率よく発見できた。さらにこの大家系全体での起因と遺伝様式まで網羅的に同定でき、すでに共同で原著論文発表した(Ohno et al. Sci Rep 2014)。発見変異だけでなく次世代シーケンシングのビッグデータまで公開するプラットフォームも分担者姫野が構築整備した。また、分担者館田と集団遺伝学的に家系解析を実施するための打ち合わせを行った。まずは第4世代まで実際に個体が得られたので第一世代がもともと持っていると想定される変異や近交係数を最小とする交配法など理論構築を進めた。
1: 当初の計画以上に進展している
2年目で5世代自然突然変異蓄積する予定であったところ、10ヶ月で3世代蓄積でき計画を上回った。マウスゲノムから高速高精度高効率に変異を検出するシステムも現在イオンプロトンを用いることで、フル稼働させれば年間100exome、総数10000変異検出が可能なスループットを得て、これも計画を遥かに上回った。自然変異を蓄積した家系では「2013年度研究実績概要」記載のとおり第1世代から第4世代まで、すでに総数545匹得られ凍結保存するので、さらなる高速高効率化が必要である。そのため、新しい解析システムとして以下のような方法を独自に考案した:1)変異蓄積したもっとも進んだ個体で、なるべく独立な分枝家系から限られた数だけを次世代シーケンサーでexome解読する。2)抽出した候補変異についてすべてMassArray法で実験的に実在を検証する。3)実験検証で実在が確認された変異群について、設定済みのMassArray法で、家系全個体を網羅解析し、発見変異がどの個体で生じどのように遺伝したか全容をトレースする。実際に、この独自に考案したシステムを、100匹を越える酸化ストレス高感受性大家系について分枝家系3つから蓄積が最も進んだ3個体を選び、exome解読を行った。抽出された候補変異全体から総数297個の変異が検出できた。さらに、家系全体を発見した297変異についてMassArray法でgenotypingを行い、発見変異の起因と遺伝様式まで明確に同定できた(Ohno et al. Sci Rep 2014)ので、数百変異について数百個体を一気に解析できることがすでに初年度に実証できた。モデル系としたENU変異マウスライブラリーから発見した変異の生物学的効果の解析においても2013年度中にNature誌articleも含め4報の原著論文を発表し期待以上の成果となった。
初年度すでに自然発生突然変異を蓄積し第4世代も得ているので、今年度はいよいよ5世代分蓄積した個体から突然変異の検出に取りかかる。新たに代表者が所属する理研バイオリソースセンターでイオンプロトンが利用可能となりスループットが大幅に上がったので、exome超高速シーケンシングに加え、全ゲノムショットガンシーケンシング法も視野に入れて検討する。そのために一連の解析に必要な費用時間人手を総合的に算出しさらなる向上を目指す。とくに、今年度は次世代シーケンサー解読後、排出されるビッグデータの情報解析に要する時間短縮と精度向上を進める。とくに、実験検証まで行った変異検出解析データが十分に蓄積されたので、今年度は、全候補を実験検証することなく、確実に変異であり検証が不要な変異と、確度が低く実験検証の必要がある候補とに、効率よく仕分けるための情報解析技術も新たに開発する。これによって、実験検証に要する時間費用人手を大幅に削減することを目指す(以上権藤担当)。さらに、ビッグデータから解析結果まで一般に情報公開する(姫野、権藤担当)。マウスゲノムに生じた突然変異の有害度や変異間相互作用をマウス個体レベルにおいて解析を進めるため、表現型と網羅的に発見した変異との相関を解析する(茶野、権藤担当)。また、酸化ストレス修復遺伝子を欠損するマウス家系において網羅的変異検出に初年度に成功したので、さらに、自然発生突然変異の主要因のひとつであるゲノムDNAの酸化損傷と突然変異生成の分子メカニズムにも迫る(大野、権藤担当)。一連の発見した変異の統計解析にも着手し、家系集団内に生じた新しい変異の挙動と集団に及ぼす影響の集団遺伝学的解析も行う(館田、権藤担当)。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (19件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (3件)
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http://ja.brc.riken.jp/news/guide_20140416_02.html
http://www.riken.jp/en/research/rikenresearch/highlights/7437
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140213_1/