研究課題/領域番号 |
25241022
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉岡 敏明 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (30241532)
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研究分担者 |
亀田 知人 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60333895)
GRAUSE Guido 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (60570017)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 熱分解 / 熱重量質量同時分析 / フェノール基板 / エポキシ基板 / テトラブロモビスフェノールA |
研究実績の概要 |
前年度のフェノール樹脂製およびエポキシ樹脂製プリント基板の熱分解試験(原料回収試験)結果を踏まえ、今年度はこれらを対象とした熱重量-質量同時分析(TG-MS)を実施し、これらの基板の熱重量減少挙動およびそれに対応する熱分解生成物の放出挙動を観察した。その結果、フェノール基板は4段階の重量減少を示した。1段目(300 ℃以下)は基板中に含まれる紙(セルロース)の熱分解および樹脂末端等の弱い結合の切断に相当し、H2O、CO2、フェノールの放出がメインとなった。2段目(300~340 ℃)は、臭素系難燃剤であるテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)の熱分解によりHBrおよびブロモフェノール類が生成、樹脂が徐々に分解されフェノール類が生成した。3段目(340~450 ℃)では樹脂の分解がメインとなり、4段目(450 ℃以上)はチャー形成およびチャー中の残留酸素がCO2として放出されることを確認した。また、フェノール樹脂およびTBBPAが同じ温度域で分解したことから、双方の熱分解生成物の相互作用によって生成したと考えられるブロモメタン(CH3Br)や、TBBPA由来のBrラジカルによって樹脂中のメチレン基の切断が誘発された可能性が示唆された。エポキシ基板も分解温度域は僅かに異なるものの4段階の重量減少を示した。しかし、エポキシ基板中のTBBPAはエポキシ主鎖中に結合しているため、TBBPAの分解に相当するHBr、主鎖と硬化剤であるフェノールノボラックに相当するフェノールの生成ピーク温度がほぼ一致した。また、フェノール樹脂に見られたような、Brラジカルによる主鎖開裂等の相互作用は確認されなかった。以上、TBBPAの樹脂中における含有形態によって、熱分解挙動および樹脂-難燃剤間の相互作用に違いがあることを実験的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H.25年度に実施したフェノールおよびエポキシ基板の原料回収試験では、熱分解生成物の定量的な結果が明らかとなったが、H.26年度では、さらに樹脂と難燃剤の熱分解挙動をその場解析によって分解メカニズムを検討し、両者の分解挙動に加え双方の熱分解生成物の相互作用が存在する可能性を示すことができた。本研究成果により、臭素系化合物の放出挙動(樹脂中への存在形態による違い等)が明らかとなり、金属回収に及ぼす臭素系化合物の影響(難燃剤-金属間の相互作用等)を検討する上で重要な成果となった。これらは、H.25年度の研究計画①および②をさらに深めた上、H.26年度以降研究計画③~⑥への今後の進展に寄与する成果であったことから、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きプリント基板を対象とした検討を進める。樹脂および難燃剤それぞれの分解挙動、分解生成物分布、双方の熱分解生成物同士の相互作用等が明らかになってきたため、ここに、金属を加えた樹脂-難燃剤-金属間の相互作用の解明に着手する。具体的には、熱分解試験による有機・無機原料の回収試験、および熱重量質量同時分析等を実施する。
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