研究課題/領域番号 |
25241024
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹門 康弘 京都大学, 防災研究所, 准教授 (50222104)
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研究分担者 |
吉村 千洋 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10402091)
渡慶次 睦範 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30291983)
角 哲也 京都大学, 防災研究所, 教授 (40311732)
堤 大三 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40372552)
風間 聡 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50272018)
藤田 正治 京都大学, 防災研究所, 教授 (60181369)
竹林 洋史 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70325249)
渡辺 幸三 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (80634435)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生息場寿命 / 河床地形 / 河床変動量 / 撹乱規模 / 撹乱頻度 / タリアメント川 / インターバルカメラ / 生態機能 |
研究概要 |
河川河床のハビタット構造とベントス群集の関係を調べるため、各地河川においてサンプリング及びデータ取得方法に関する検討をおこなった。2013年7-9月のタリアメント川調査においては、インターバルカメラによる河床地形の連続撮影をしている地点について、実際に様々な生息場で環境条件ならびに水生生動物相の調査を行なった。また、生息場類型ごとに底生動物のDNA種を用いた種多様性分布様式を追究するとともに,生息場間での有機物由来や酸素消費速度の違いについて明らかにした。さらに、タリアメント川の河床環境条件下で、二次元河床変動計算を用いた網状流路の生息場寿命を予測計算するモデルを開発した。このモデルに浸透流を加えることによって、生息場の質的評価が可能となった。 いっぽう、天竜川、木津川、相模川においては、氾濫原区間における河床地形の連続写真撮影によるモニタリング調査を開始した。また、木津川、神通川流域においては、ハイドロフォンも併用して源流域の土砂生産指標ならびに流出特性の調査も実施した。 分布型水文流出モデルの数値計算を用いて水生昆虫の生息場を標高別調査した結果,1) 底生動物群集全体の個体数密度は,平均水温と負の有意な相関関係を示した。2) カワゲラ目はEPTの中で平均水温と最も強い負の相関関係を示した.3) 源流域における底生動物群集全体の個体数密度は近未来気候において21%,遠未来気候において31%減少することが推定された。 以上のようにフィールド調査はうまく実施されたが、データ解析の大半が今後に残されている。平成26年度には、河川構造、特にその複雑性と生物群集の関係に関するレビュー、各地河川のインターバルカメラによって得られた画像による生息場寿命の分析、生息場寿命と生息場条件の対応関係分析、生息場寿命と生物相の対応関係分析などを開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果を上げるためには、インターバルカメラを現地に設置し、河床地形の連続モニタリングデータから生息場寿命に関する実データを得ることが大前提となっている。平成25年度には、既存のインターバルカメラが設置されているタリアメント川に加えて、木津川、天竜川、相模川にインターバルカメラの設置が完了し、データの蓄積が順調に進んでいる。これらの現状から、河床地形の連続モニタリングに関しては、1年目の目標を概ね達成できたといえる。 いっぽう、タリアメント川、木津川、天竜川では、インターバルカメラによるモニタリング現場において生息動物種の分布や個体数調査を実施し、生息場の撹乱履歴と生息場構造や環境条件の対応関係を示すことができた。また、名取川においては、分布型水文流出モデルに水温条件を考慮したすることで,数値計算による生息適性推定の精度の向上が見られた.さらに、二次元河床変動計算を用いた網状流路の生息場モデルによって、生息場寿命やわんど・たまりへの浸透流を予測計算することが可能となった。これらの成果は、平成25年度計画の目標に掲げられた内容であり、対象地域に限定があるものの各項目の目標は達成されたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
インターバルカメラを現地に設置に関しては、当初予定していた十津川流域、名取川、神通川については未設置であり、平成26年度のできるだけ早い時期に設置する必要がある。また、タリアメント川、木津川、天竜川では、撹乱によって生息場の構造や環境条件が好適化する実例を示すことができたが、生息場年齢との対応関係については事例数が少ないため現時点では、一般化が困難である。このため、各地河川のモニタリングデータを用いて、生息場寿命の頻度分布を示すことが当面の目標標となる。 また、名取川では、分布型水文流出モデルに土砂の影響を加えた上で,USLE式を用いて河川環境の生息適性を評価する方針である.いっぽう、二次元河床変動計算を用いた網状流路の生息場モデルについては、計算事例が未だ少ないのが現状である。今後はモデル計算の設定条件を増やして、生息場寿命とわんど・たまりへの浸透流の関係などを分析することが今後の課題である。さらに、生息場寿命の重要性を一般化するために、河川構造、特にその複雑性と生物群集の関係に関するレビューを行なう予定である。
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