研究課題
海鳥繁殖地の回復が生態系に影響を及ぼす範囲を明らかにするため、地中営巣性種オナガミズナギドリの営巣環境選好を明らかにした。本種の営巣地は、海からの距離や標高に制限されていないことが明らかになった。また、カツオドリは傾斜に制限されずに営巣していたが、オナガミズナギドリでは緩斜面にのみ営巣することが明らかになった。ヤギ駆除後の土壌の流出と流入は、植生退行の程度と関係しており、土壌の化学特性を改変し、植物の分布にも影響する可能性が示唆された。土壌流出地の土壌を用いて植物の栽培実験を実施した結果、植物の初期成長は、土壌中のリン不足によって制限され、この制限の程度は土壌のpH依存することが示唆された。ヤギが生息していた時期、ヤギの駆除後における土地被覆を航空写真から読みとり、その変遷を数値化した。それらと現在のギンネム分布との関係を検討した結果、ヤギ生息時の土地被覆は裸地が増加し、駆除後に減少する、ヤギ不在下では最初に草原が増加し、続いて森林となっていく、その森林はギンネムが優占する傾向が強いことを明らかにした。採取した土壌試料の化学分析とデータ解析より土壌流出の原因が土壌特性にあることを明らかにした。ヤギによる撹乱が小さい場所では、表層土壌は弱酸性であり、かつ植物が吸収可能な窒素やリンが比較的豊富であったのに対して、撹乱が大きい場所では、表層土壌は失われ、強酸性で貧栄養な下層土が土壌表面に現れているため、植物の定着が悪かったと考えられた。これまでのメタ生態系モデルに土壌の化学特性の変化プロセスを導入し、土壌の化学組成の変化がヤギ駆除後の植生変化にどのような影響を及ぼすのかを解析した。その結果、裸地での土壌侵食の結果、植物の生育に不適な低pH、貧栄養の下層土が露出し、さらにそれが運搬されて低地を覆うため、ヤギ駆除後も植生が回復しにくくなることが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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