研究課題/領域番号 |
25241028
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小野寺 真一 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (50304366)
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研究分担者 |
齋藤 光代 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (20512718)
高橋 英博 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 近畿中国四国農業研究センター, 研究員 (30414783)
山本 民次 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (40240105)
松森 堅治 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 近畿中国四国農業研究センター, 研究員 (40414445)
福岡 正人 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70117232)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境調和型農業 / 水資源 / 地下水 / 硝酸性窒素 / 富栄養 / 肥料 / 流域 |
研究実績の概要 |
1)農業流域での富栄養地下水再利用システムの現地検証:①広島県尾道市(生口島)の傾斜地果樹園に “節水型灌水(マルドリ型)システム”を設置したマルドリ試験区と慣行の施肥量・灌水方法による対照区を設置し(約8 a)、土壌水分、溶脱窒素量の計測を行った。マルドリ区の施肥窒素量は17.8 kg/10a(対照区の6割;液肥)とし、そのうち約20%を水源(地下水)の溶存窒素(濃度が約20mg/L)で代替できた。土中埋設イオン交換樹脂により施肥窒素の溶脱率を推定した結果、50cm層への窒素溶脱率は対照区で約20%であるのに対して、マルドリ区で2.6%と非常に小さいことが明らかとなった。②流域スケールでの実証試験については,高解像度の水位・水質のモニターを行った結果、地下水中での溶存窒素が斜面中流域においては希釈の影響を受けるものの安定しているのに対して、下流部では希釈および脱窒の季節変化に及ぼす効果を確認し、さらにそれにともなうN2Oガス濃度の大きな変動を明らかにした。 2)モデル解析による富栄養地下水再利用システム効果の検証:①昨年から継続して従来の観測情報をもとにSWATモデルおよびHYDRUS-1Dモデル解析を行い、流域水収支及び地下水涵養量を見積もった。解析の結果、平均で降水量の4割程度の地下水涵養量と10年間の年々変動を確認できた。 3)持続可能性の定量的評価:①前年のヒアリング調査に加えて、慣行栽培体系(従来型)と節水型灌漑システム(マルドリ型)を導入した栽培体系について、LCA(ライフサイクルアセスメント)解析による環境負荷評価を行った。その結果、温室効果ガス排出量では、慣行型に比べてマルドリ型で資材による温室効果ガス排出の影響で1.15倍となったが、富栄養化インパクトは同程度であった。生産コストではマルドリ型導入によって従来型に比べて10aあたり年間約8.3万円増加し約47%の増加と見積もられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)代表者、分担者、連携者、協力者に至るまで、個々のエフォートが十分に投入された結果であると考える。 2)あわせて、2014年度に5回の研究会を実施し、すべてに外部(共同研究者以外)の研究者を招聘し、4回は他の研究会と共催で実施し、常に情報収集と外部評価に努めてきている点で、進捗状況も良好であると考えられる。 3)他の科研プロジェクトとの連携も効率的な推進に寄与しているだろう。また、総合地球環境学研究所の栄養塩プロジェクト(代表:奥田)など他のプロジェクトとも連携している。
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今後の研究の推進方策 |
1)個別の課題については、現在の研究計画に従って推進していく予定である。 2)各課題の相互連携については、今年度も随時研究会を実施し推進していくとともに支援していく。また、研究会では外部研究者も招聘しながらプロジェクトの外部評価も受けながら生かしていく予定である。 3)他の研究プロジェクトとも、積極的に連携していきながら、効率的な研究推進に努めていく。 4)最終年ということで、公表については積極的に推進していくとともに、新たな概念の提案と今後の展開について取りまとめていく。
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