研究課題/領域番号 |
25242003
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松隈 浩之 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 講師 (60372760)
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研究分担者 |
樋口 重和 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (00292376)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シリアスゲーム / ロコモティブシンドローム / ヘルスケア / ゲーミフィケーション |
研究概要 |
本研究の目的は、高齢者を対象にしたロコモティブシンドローム対策用ゲームによる健康維持・向上効果および、高齢者に受け入れられやすいゲームデザインについて明らかにし、日本のゲーム分野の拡大と社会保障費の削減の手法を見いだす事にある。初年度の計画では、研究の基となるゲームのプロトタイプ開発に注力を置いた活動を行った。連携研究者である九州大学病院リハビリテーション部の高杉准教授と協議した後、ロコモティブシンドローム対策トレーニングの中からバランス力を維持する開眼片足立ちに訓練内容を設定し、ゲーム『ロコモでバラミンゴ』を開発した。内容は、日本整形外科学会が推奨する静的バランスを保つ訓練を基本とし、60秒間片足で楽しく立つことができるゲームとしている。また、左右に体を振る重心移動をとりいれた動的バランスによる運動モードと、状況にあわせて手を上げ下げするデュアルタスクモードも追加した。前者はスクワットによる筋力トレーニング要素を、後者は前頭葉を刺激することによる、認知症予防効果を期待したものとなっており、ゲーム性も増したものとなっている。ゲームに関する身体面評価については、プロトタイプ段階でおこなうよりは、完成型で行った方がよいと判断し、福祉人間工学,神経科学を専門とする連携研究者を新たに2名加えた上で2年目におこなうこととした。代わりに2年目後半で実施予定のミラーシステム評価を、過去に開発したリハビリ用ゲームを用いて、プレ実験という形で1年目に実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の基となるロコモティブシンドローム対策用ゲームについて、検証可能なクオリティを完成させることが出来ている。ゲームで採択したトレーニング法についても、連携研究者と十分に協議した結果定めており、また内部での評価も良好となっている。発表等について、ゲームデザイン面では、年度末に主催した国際シンポジウムにてデモ展示とともに報告をおこない、関係各者から高い評価が得られている。社会的評価として、有意義な活動としてTVでの紹介も3件あり、また国内最大のゲーム分野の開発者会議2014CEDEC(Computer Entertainment Developers Conference)の発表に採択されている。 評価面については、ミラーシステム関連で4件の学会発表を実施し、今年度に論文発表へと繋げて行く予定である。一部、身体面での評価を次年度に繰り越したが、3年間をとおした計画としては問題ないと判断している。 以上から、初年度にの取り組み自体は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
●ゲームデザインについて初年度に開発したゲーム『ロコモでバラミンゴ』について2年目以降、分担、連携者による検証実験、協力者である介護施設での長期的検証をおこなっていき、そこで得られたフィードバックを基に、随時改良をおこない、高齢者にとってより有用なゲームを目指す。また、連携研究者である高杉准教授から、ロコトレ(ロコモティブシンドローム予防トレーニング)のターゲットである比較的元気な高齢者だけでなく、座位によるトレーニングとすることで要介護高齢者まではばを広げる事が可能との示唆があり、より幅広い層で活用してもらうために追加のデザインをおこなう。 ● ゲームの効果検証・評価について本年前半で訓練としての機能性を測るべく、開発したゲームを用いての生理的実験をおこない、本年後半で、モチベーションやストレスを測るための心理的な効果の検証を行う。実験はゲームを用いて訓練を行った場合と、用いずに一人で訓練を行った場合の比較で行う。またゲームは利用者だけではなく周りで観察する人にもポジティブな効果をもたらしている可能性があり、ゲーム観察時の運動感覚野の状況を調査する。なお、本年度より生理実験の担当者として、村木里志(九州大学大学院芸術工学研究院 准教授、専門分野は福祉人間工学,運動生理学)およびキム ヨンキュ(九州大学大学院芸術工学研究院 准教授、専門分野は感性科学、生理人類学、神経科学)を連携研究者に加える。 ●現場における有効性を示すための長期検証について地場で転倒予防教室等を開催している自治体と連携し、ゲームの活用をおこないつつ、利用者からのフィードバックを集める。協力者である長尾病院に本ゲームを設置し、本年から最終年度まで、長期にわたって利用状況を調査する。また、現場から得られたフィードバックは随時、改良へとつなげる。 年度末に、成果報告と情報交換を兼ねたシンポジウムを開催する。
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