研究課題/領域番号 |
25242011
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
諸岡 晴美 京都女子大学, 家政学部, 教授 (40200464)
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研究分担者 |
三野 たまき 信州大学, 教育学部, 教授 (00192360)
薩本 弥生 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (10247108)
井上 真理 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (20294184)
谷 明日香 四天王寺大学短期大学部, その他部局等, 講師 (30413446)
高野倉 睦子 神戸女子大学, 家政学部, 准教授 (40183438) [辞退]
丸田 直美 共立女子大学, 家政学部, 教授 (70183621)
斉藤 秀子 山梨県立大学, 人間福祉学部, 教授 (80162220)
中橋 美幸 富山県工業技術センター, その他部局等, 研究員 (90416149)
深沢 太香子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90423574)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シニアの健康 / 加齢 / 衣環境 / 衣生活支援 / QOLの向上 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究成果の概要は、以下の通りである。 1.20歳~79歳の女性145名を被験者として、人体表面の圧縮特性の特徴量を抽出し、各年代別に定量化した。また、全身の人体表面の圧縮柔らかさと皮下脂肪厚との関係について、若齢者とシニア層の比較を行った。ブラジャー着用時の背部体表面の段差を客観評価する方法として、非接触三次元デジタイザおよび画像解析ソフトを用いて得られる特性値を提案し、背部体表面の段差を抑制しうるブラジャーの具体的な設計指針を導出した。動作時のブラジャーの快適性に及ぼす身体特性、ブラジャーの種類の影響に加え、年齢との関係性についても明らかにした。さらに、椅座位時および仰臥位時における脚各部の圧迫が血液循環系および自律神経系に及ぼす影響を明らかにし、血栓予防靴下の欠点である強圧からくる皮膚血流阻害や圧ストレスを抑制する弾性靴下設計のための基礎的指針を得た。 2.寒冷環境下における頸背部加温が血液循環系,自律神経系および主観評価に及ぼす影響について,季節による暑熱順化や寒冷順化がもたらす影響差について解析を行った。また、ファブリックヒータについての研究では、高齢者の体温調節反応を若齢者と比較検討する実験を行った。温冷感覚感受性については、年齢によらず男性よりも女性で鋭敏であり、男女ともに加齢により鈍化する傾向を明らかにした。着圧パンツが体脂肪燃焼効果に及ぼす影響については、前年度までの実験にシニア世代での実験を加えた。下部胸囲圧迫と発汗反応については論文にまとめた。 3.圧縮特性の異なる円筒モデルを用いた実験では、圧縮かたいほど衣服圧が高くなる傾向を明らかにするとともに、皮膚特性と肌着との摩擦特性との関係性を明らかにした。 その他、審美性の観点から、いせこみが衣服のシルエット形成に及ぼす影響やハンディスキャナーを用いたシルエット把握についての研究を論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、加齢による心身の変化が大きくなるシニア層以上を対象に、「健康で」しかも「アクティブに」生活するための衣生活支援のあり方を提案することを目的として研究を行っている。具体的には、加齢による心身の変化を定量的に捉え、これらを把握したうえで、「老い」に対して積極的なコンセプトをもった繊維製品の開発やその設計指針を導出することを最終目的に研究を遂行している。 まず、本研究題目の最もおおきなテーマである人体表面の圧縮特性の定量化については、背部で20~79歳までの女性145名について明らかにした。全身については、若年層10名、シニア層10名について、全身89か所の圧縮変形量と皮下脂肪厚との関係を明らかにするなど、被験者数を増やし順調に研究を進展させている。 また、ブラジャー着用時の背部段差の少ない審美性を追求したブラジャー設計や、動作時の防振性に及ぼすブラジャーデザインと身体特性の影響についてもシニア層の実験へと進展させている。 温熱的快適性からのアプローチにおいても、局所加温が人体生理に及ぼす研究および温冷感覚感受性に関する研究、さらには着圧パンツが体脂肪燃焼効果に及ぼす影響に関する研究など、被験者を若齢者からシニア層へと拡大して実験を行っている。 以上のように、各研究者が主体となって進めるそれぞれの研究テーマにおいて、初年度の若年層を用いた基礎研究からシニア層を被験者とする研究へ、さらには被験者数を増やすなど着々と研究を進展させ、多くの件数の口頭発表およびポスター発表および、一部は論文執筆にまで至っている。また、本研究に関連した継続研究についても、論文執筆や招待講演、一般消費者や専門家に向けたテキスト執筆を行っている。 これらの観点から、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(平成25年度)においては、研究体制の確立、研究の準備、予備実験および基礎的実験を行った。平成26年度および平成27年度においては、本格的な実験を開始するとともに研究の伸展を図り、多くの口頭発表を行った。平成28年度は最終年度に当たり、研究の補足および発展と、論文執筆を行う計画である。以下に具体的な研究内容を列挙する。 1.人体表面の圧縮柔らかさについて論文執筆を行う。また、ブラジャー着用時の背部体表面の段差(凹凸)を客観評価した特徴量を用いて、ブラジャーの形態、素材および寸法の各観点からの設計に関する論文をまとめる。また、体脂肪燃焼を促進する着圧利用型衣服の提案については、高齢女性に焦点を当ててその効果を検証する。さらに、円筒モデルを用いて、衣服圧を布の材料特性から予測計算する方法に関する研究では、特に摩擦特性を考慮した検討を行う。人体表面の圧縮変形量と皮下脂肪厚との関係、ブラジャー圧と動作時の振動特性との関係などの研究については、順次論文にまとめる。 2.市販ヒータ服着用による人体生理への影響についても論文にまとめる。スマートテキスタイルを用いた局所加温に関する研究については、高齢者を加えた実験についてデータ解析を行う。また、温冷覚感受性における性差および年齢差と、下部胸囲圧迫による発汗反応における年齢差についても、これまでの実験データを解析し、論文執筆を行う。 3.皮膚性状と皮下構造との関係についての研究では、衣服へのたんぱく質加工処理が皮膚性状に及ぼす影響について検討する。 4.頸背部を比較的広範囲に加温する市販ヒータベストと、スマートテキスタイルを用いた局所加温について、脳波測定による感性スペクトル解析を行い、心地のよい加温部、温度域、加温面積について検討する。以上、基礎的研究から発展的研究までを横断的・総合的視点から研究をまとめる計画である。
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