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2015 年度 実績報告書

食品成分間相互作用の新規解析方法の確立と味覚修飾物質のスクリーニング

研究課題

研究課題/領域番号 25242012
研究機関東京大学

研究代表者

朝倉 富子  東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (20259013)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード食品 / 塩味 / 苦味 / 脂肪酸 / 成分間相互作用
研究実績の概要

味は食品の美味しさにとって最も重要な要素である。食品に含まれる味物質は、互いに作用しあっている。例えば味の相互作用、相乗作用、対比効果などである。特に食品加工では、苦味抑制物質と塩味増強物質が重要な働きをもっており、本研究はこれらの物質をスクリーンングするためのアッセイ系の構築および、作用機作を解明することを目的とする。
前年度までに塩味受容体候補のひとつであるENaCを活性化する分子を数種見い出した。これらはインドール環を有し、側鎖に特徴のある構造を有していた。一方で、塩味を増強する物質としてグアンジルアルコールを見い出し、化学的に合成した。本物質は、異味がなく塩味だけを選択的に増強した。またチーズの苦味抑制物質として同定した脂肪酸による苦味の抑制機構を明らかにした。すなわち脂肪酸のカルボキシル基が苦味物質中に存在するN原子と水素結合し、binary complexを形成する。binary complexはさらに脂肪酸の側鎖同士で疎水結合を形成する。これら2種類の相互作用によって凝集体を形成し、苦味物質の構造が変化するとともに不溶化することで苦味が低減化されることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究は、食品成分間の相互作用を解析することで、単独で存在する場合に較べて、より機能性の高い化合物を創出することを目的にしている。第一に塩味増強物質を新規に開発することに成功した。本物質は、水に易溶でかつ高い精製度を実現している。また異味がなく塩味のみを選択的に増強する想定以上の成果である。
第二にチーズより見い出した苦味抑制物質、脂肪酸がどのような苦味物質に対して効果を発揮するか、構造的な特徴を明らかにした。苦味の抑制メカニズムとして、苦味物質中のN原子と脂肪酸のカルボキシル基が水素化合を介したbinary complexを形成する。binary complexは、脂肪酸側鎖同士の疎水性結合によって大きな凝集体を形成し、苦味が抑制されることを等温滴定カロリメトリー(ITC)、NMRを用いて解明した。当初の予定どおりの結果を得ることができた。

今後の研究の推進方策

本年度は未だ明らかになっていない塩味受容体について、候補分子の機能解析とKOマウスによる表現型を観察する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Long-Chain Fatty Acids Elicit a Bitterness-Masking Effect on Quinine and Other Nitrogenous Bitter Substances by Formation of Insoluble Binary Complexes.2015

    • 著者名/発表者名
      Ogi, K., Yamashita, H., Terada, T., Homma, R., Shimizu-Ibuka, A., Yoshimura, E1. Ishimaru, Y., Abe, K., and Asakura, T
    • 雑誌名

      J Agric Food Chem.

      巻: 63 ページ: 8493-8500

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Identification of key neoculin residues responsible for the binding and activation of the sweet taste receptor.2015

    • 著者名/発表者名
      Koizumi,T., Terada, T., Nakajima, K., Kojima, M., Koshiba, S., Matsumura, Y., Kaneda, K., Asakura, T., Shimizu-Ibuka, A., Abe, K., and Misaka, T.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 5 ページ: 12947

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] パンへのグルテンまたはデンプン添加がパン粥のテクスチャーへ及ぼす影響2016

    • 著者名/発表者名
      沖邉 敦代、久保 奈美、松尾 実優、芹田 千穂、江頭 和佳子、朝倉 富子、舟木 淳子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2016年度大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-03-30
  • [学会発表] RNA-Seq法を用いた小腸刷子細胞発現遺伝子の網羅的探索2016

    • 著者名/発表者名
      谷下 道大、吉岡 美紗子、朝倉 富子、阿部 啓子、石丸 喜朗
    • 学会等名
      日本農芸化学会2016年度大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-03-30
  • [学会発表] 官能評価を反映した嚥下調整食の動的粘弾性による物性基準と予測モデルの構築2016

    • 著者名/発表者名
      茅沼 友希、上田 玲子、南 道子、舟木 淳子、石丸 喜朗、阿部 啓子、朝倉 富子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2016年度大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-03-29
  • [学会発表] 粉餌あるいは固形餌を長期間摂取させたラットの脳内発現遺伝子の比較解析2016

    • 著者名/発表者名
      小川 真奈、永井 俊匡、齊藤 美佳、石丸 喜朗、阿部 啓子、朝倉 富子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2016年度大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-03-28
  • [学会発表] 咀嚼頻度の異なる餌を摂取させたラットの行動および脳内発現遺伝子の比較解析2016

    • 著者名/発表者名
      田熊 彩子、永井 俊匡、石丸 喜朗、阿部 啓子、朝倉 富子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2016年度大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-03-28
  • [学会発表] パンの材料・配合がパン粥のテクスチャーへ及ぼす影響2015

    • 著者名/発表者名
      西原百合枝、沖邉敦代、芹田千穂、江頭和佳子、朝倉富子、舟木淳子
    • 学会等名
      調理科学会平成27年度大会
    • 発表場所
      静岡県立大学
    • 年月日
      2015-08-25
  • [学会発表] プロテアーゼによる加熱エビの物性の改変2015

    • 著者名/発表者名
      芹田千穂、沖邉敦代、西原百合枝、江頭和佳子、朝倉富子、舟木淳子
    • 学会等名
      調理科学会平成27年度大会
    • 発表場所
      静岡県立大学
    • 年月日
      2015-08-24

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公開日: 2017-01-06  

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