研究課題
味は食品の美味しさにとって最も重要な要素である。食品に含まれる味物質は、互いに作用しあっている。例えば味の相互作用、相乗作用、対比効果などである。特に食品加工では、苦味抑制物質と塩味増強物質が重要な働きをもっており、本研究はこれらの物質をスクリーンングするためのアッセイ系の構築および、作用機作を解明することを目的とする。前年度までに塩味受容体候補のひとつであるENaCを活性化する分子を数種見い出した。これらはインドール環を有し、側鎖に特徴のある構造を有していた。一方で、塩味を増強する物質としてグアンジルアルコールを見い出し、化学的に合成した。本物質は、異味がなく塩味だけを選択的に増強した。またチーズの苦味抑制物質として同定した脂肪酸による苦味の抑制機構を明らかにした。すなわち脂肪酸のカルボキシル基が苦味物質中に存在するN原子と水素結合し、binary complexを形成する。binary complexはさらに脂肪酸の側鎖同士で疎水結合を形成する。これら2種類の相互作用によって凝集体を形成し、苦味物質の構造が変化するとともに不溶化することで苦味が低減化されることを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究は、食品成分間の相互作用を解析することで、単独で存在する場合に較べて、より機能性の高い化合物を創出することを目的にしている。第一に塩味増強物質を新規に開発することに成功した。本物質は、水に易溶でかつ高い精製度を実現している。また異味がなく塩味のみを選択的に増強する想定以上の成果である。第二にチーズより見い出した苦味抑制物質、脂肪酸がどのような苦味物質に対して効果を発揮するか、構造的な特徴を明らかにした。苦味の抑制メカニズムとして、苦味物質中のN原子と脂肪酸のカルボキシル基が水素化合を介したbinary complexを形成する。binary complexは、脂肪酸側鎖同士の疎水性結合によって大きな凝集体を形成し、苦味が抑制されることを等温滴定カロリメトリー(ITC)、NMRを用いて解明した。当初の予定どおりの結果を得ることができた。
本年度は未だ明らかになっていない塩味受容体について、候補分子の機能解析とKOマウスによる表現型を観察する。
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J Agric Food Chem.
巻: 63 ページ: 8493-8500
Sci Rep.
巻: 5 ページ: 12947