研究課題/領域番号 |
25242013
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
渡辺 高志 熊本大学, 薬学部, 教授 (70210911)
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研究分担者 |
渡邊 浩幸 高知県立大学, その他部局等, 教授 (30369425)
高木 方隆 高知工科大学, 工学部, 教授 (50251468)
菅沼 成文 高知大学, 医歯学系, 教授 (50313747)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | レアープランツ / GIS地理情報システム / インベントリー / 食品化開発 / 活性疾患別評価 / GUI構築 / 保険機能食品 / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
「地理情報システム利用によるレアプランツのインベントリーと有用性・安全性の評価」を開始し,漢方薬素材の代替または補完医薬素材になり得ると考えられるレアプランツの探索研究を展開した.今年度は平成27年9月にネパール国東部のソル・クンブー地方ジリ周辺までの往復路(昨年度とは別ルート)を訪問し,2週間に及ぶ山岳調査を行い帰国した.その後,1名の熊本大学大学院薬学教育部前期学生が平成28年1月まで現地に滞在し,西部ポカラ周辺,アンナプルナBC周辺域の調査を中心にヒマラヤ産有用植物のインベントリーを行った.平成27年12月にはミャンマー国パテイン大学に招聘され国際学術シンポジウムでの当該課題に関する研究発表を行った.平成28年3月上旬には,カンボジア国プノンペン市内のカンボジア保健省国立伝統医療研究所での現地調査と試料の再構築を行った.そして,南部に進路を変え同省附属のカンポット薬用植物園を訪問し,有用・薬用植物の写真撮影後,園内有用植物の記録を行った.プノンペン市内オルセー市場に於いて,Khur Khmer伝統医が使用する試料を研究室に持ち帰り.大学院前期学生の研究対象植物としてリストを作成した. これまでに,コーヒーベルト地域と呼ばれている台湾,ネパール及びソロモンより採取した植物の抽出物142種について,生理活性評価とデータベ-ス構築の準備を行った.これまでに,酵素活性を指標としたα-グルコシダーゼ阻害活性,リパーゼ阻害活性および細胞培養による大腸がん細胞生育抑制効果について評価した.それぞれの項目について,強い生理活性を見いだした.特に,大腸がん細胞生育抑制効果について,抽出物1種については,アポトーシスによるメカニズムを明らかにし,抗がん剤としての創薬の可能性を見いだした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本と同じ日華植物区系に属すネパールでの一次インベントリー調査を終え,収集した植物試料の成分研究が熊本大学大学院薬学教育部学生らにより順調に進んでいる.昨年度,高知工科大学から熊本大学大学院薬学教育部に移籍したが、1年間のギャップを感じさせないスピードで成分単離同定が進められている.そして,熊本大学チームにより生活習慣病及び抗炎症の対する活性評価モデルが整いつつあり,産業化を目標に有用植物の活性成分本体が解明されることが期待できるため,今年度は学術論文の投稿を急いでいる(高知県立大学・渡邊浩幸教授).また、熊本大学大学院薬学教育部の渡邊研究室では,日本薬学会九州支部主催の学会で3名が当該研究に関する発表準備を行っている.さらに,昨年度まで手付かずだった産業化の期待が出来る有用植物の分類研究に関して,高知工科大学環境理工学群の2名の卒論学生らにより,遺伝情報の解析法(Genomic Bar Cording)によるソロモン諸島の種の同定作業が進められ.H28年前期を目処に,ソロモン諸島で蒐集した植物試料の学名の解明、そして新産地登録、新種の発見を含めた包括的な研究が連携研究者らによりまとまられる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
① ソロモン諸島有用植物(衣食住+薬用)に関する研究 H26年3月に高知県立大学の渡邊浩幸教授に提出した試料の評価結果を待って,平成25年度及び平成26年度の植物学名と突き合わせ評価結果を元に論文投稿を行う.ソロモン諸島の植物の中で,伝承医が用いた植物で有りながら食経験を有する植物と食に供さない種に分類した平成26年度の試料リストを仕上げる.活性評価の高かった植物としてFicus属の実は食用になるのも多いが種の同定が難しい.そのため,DNA解析を高知県立牧野植物園の瀬尾研究員の指導により学生の卒論植物試料に関してDNA分析実験をほぼ終え,残された試料に対する実験の最終仕上げ実験を継続する.まとまり次第、全リスト植物の同定を行い早期投稿を目指す. ②ネパール・ヒマラヤ産有用植物(衣食住+薬用)に関する研究 伝統医が用いた植物で有りながら食経験を有する植物と食に供さない種に分類した平成25年度提供試料リストにある植物で、既に研究が進んでいるものと、今までに単離し成分名がはっきりしているネパール産植物の成分ライブラリーが、既に30~50程ストックとして有るため,今年度は食経験を有する平成27年度までの試料のTLC成分定性試験を行い,結果を元に候補植物を絞る.それらの植物の活性評価を行い研究結果をまとめる. ③ミャンマー国内ヒマラヤ産有用植物(衣食住+薬用)に関する研究 環境による要因で、GISを使ったマイハギの適地評価から、ネパールにも何故分布しているのか?遺伝的な要因まで行くとかなり解り易いと考える.GIS地理情報システムを使った研究として、日本産ウバユリの地上部(特に葉)に対する高血圧の抑制効果が期待されている.次年度からヒマラヤ産ウバユリに関する国際共同研究を仕掛けたい,そして植物の持つ成分が高血圧に与える影響として,生理活性メカニズムの解明と産業化までの道筋について検討する.
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