研究課題
基盤研究(A)
縄文・弥生時代における編組・繊維製品等への植物利用を明らかにすることを目的に、編組・繊維製品等に利用することが可能な「素材可能植物」の画像データベースを作成するため、これまでに作成したリストに基づきアケビ属、テイカカズラ、ツヅラフジ、ウリ科等の蔓、イラクサ科の茎と繊維、シダ植物の葉柄及びサクラ類、ニレ属、カンバ属などの樹皮など38種の現生植物標本とその形態組織解析用試料を蒐集し、組織プレパラ-トを作成し、顕微鏡写真を撮影して画像データベースの基本データとした。編組製品等を出土した北海道松法川北岸遺跡、伊茶仁チシネ遺跡、青森県三内丸山遺跡、秋田県戸平川遺跡、中山遺跡、宮城県山王囲遺跡、里浜貝塚遺跡、福島県荒屋敷遺跡、神奈川県河原口坊中遺跡、埼玉県南鴻沼遺跡、千葉県北下遺跡、道免谷津遺跡、東京都下宅部遺跡、富山県小竹貝塚遺跡、福井県鳥浜貝塚遺跡、愛知県一色青海遺跡、奈良県唐古・鍵遺跡、鳥取県金沢坂津口遺跡、佐賀県東名遺跡などの出土遺物が保管されている機関・施設を訪問し、遺物の観察測定を行うと共に、許可が得られた遺物については素材植物同定用の試料を採取した。これら蒐集された試料は樹脂包埋、切片作成等を現在も行っている。また、一部については同定結果を取りまとめ報告原稿を執筆して遺物管理者に提出し、あるいは研究報告として印刷準備中である。東名遺跡から出土した縄文時代早期の編み籠2点について、それぞれ素材の同定結果に基づき、テイカカヅラとツヅラフジの蔓を採取し、遺物に忠実に復元する実験を行い、成果として復元籠2点を得た。これら復元籠は素材の強度や機能性の検討を実験的に行う為に使用するほか、出土遺物と合わせて縄文人の植物利用についての展示公開に利用している。
2: おおむね順調に進展している
3年計画のうち初年度は現生植物の試料・標本採集及び遺跡出土遺物の観察・実測と資料収集に重点を置いた。現生植物採集については目標の50種類に対し38種類とやや不十分であったものの良好な資料を得ることが出来た。そしてその組織プレパラート作製も順調に進んでいる。遺跡出土資料については当初予定した遺跡出土品が対応機関・施設等の都合で出来なかったものが3件ほどあるが、それらについても次年度での調査の約束を取り付けるなどしており、ほぼ計画通りに進んでいると言える。
平成26年度は25年度にやり残した遺跡出土品の調査に加え、新たに15ほどの遺跡を予定しており、これでほぼ全国の縄文、弥生時代遺跡の編組製品遺跡を網羅したことになる。また、中国浙江省の新石器時代遺跡である田螺山遺跡において植物性出土品の調査・研究を浙江省文物考古研究所と共同で行う。これらの調査及び前年度までの調査で蒐集された編組製品素材の組織プレパラートの作成・観察・同定を行い、結果を報告書あるいは論文にまとめ公表する。初夏と秋に国内数箇所で編組製品及び繊維製品素材可能植物の集中的採集を行う。これらについて組織切片を作成し、顕微鏡写真を撮影して画像データベースのデータを作る。前年度採取した花粉分析資料等の解析を行う。平成27年度(最終年度)は前年度までので不足している部分を補いつつ、データのとりまとめ・発表とデータベース作成、公表を行う。また、それまでの研究成果を基にシンポジウムを開催し、成果の公開・広報を行う。
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