研究課題/領域番号 |
25242022
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 三男 東北大学, 学術資源研究公開センター, 名誉教授 (80111483)
|
研究分担者 |
大山 幹成 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (00361064)
佐々木 由香 明治大学, 知財戦略機構, 客員研究員 (70642057)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 縄文時代 / 新石器時代 / 編組製品 / 繊維製品 / 樹皮製品 / 素材植物 / 編組技法 |
研究実績の概要 |
縄文・弥生時代における編組・繊維製品等への植物利用の実態を明らかにすることを目的に、日本及び中国の新石器時代遺跡の出土遺物の調査を行った。調査を行った遺跡は、北海道の忍路土場遺跡から沖縄県の前原遺跡、伊礼原C遺跡までの全国の約30遺跡である。これらの調査で採取した試料は現在樹脂包埋を行い、組織切片作成、植物種同定の作業中であるが、一部については既に結果が出ており、これについては資料提供者に結果を報告し、一部については報告書の執筆を行っている。また、中国浙江省の新石器時代遺跡である田螺山遺跡において遺物の出土状況を調査すると共に木柱列及び木材遺構の測量調査を行った。 編組製品等を出土した遺跡の植物資源環境を明らかにするため、北海道伊茶仁カリカリウス遺跡、宮城県多賀城跡などでハンドボーリングを行い、花粉分析試料及び年代測定試料を採取し、一部について年代を測定して花粉分析を行う準備を整えた。 編組製品等の素材に利用可能植物のプレパラートコレクションと画像データベースを作成するための試料を岐阜県飛騨地方と福岡県で行った。採取された試料は生態写真の画像データを整理すると共に試料を包埋して切片を作成し、プレパラートコレクションとすると共に顕微鏡写真を撮影してデータベースに登録する準備を進めている。 福岡県久留米市の正福寺遺跡出土籠及び東京都東村山市の下宅部遺跡出土籠について、出土遺物を精査した結果に基づき、素材の植物種、形状を正確に復元した上で遺物の編組技法に忠実にしたがって復元製作実験を行った。成果として得られた復元籠は出土遺物と合わせて展示公開等に活用している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画のうち2年次である平成26年度は遺跡出土編組製品等の遺物調査・記録、試料収集とその素材同定作業を進めることが主眼であったが、30ほどの遺跡の調査をすませ、多くの試料の提供を受けることが出来た。試料については順次切片を作成して植物種の同定を行っており、一部については既に結果を出し、報告したものもある。 また、前年に引き続き編組製品等素材可能植物の蒐集に努め順次対照標本の整備を計ることが出来た。 但し、この過程において、これまで想定していなかったような遺物の「再発見」が相次ぎ、対象遺物を拡大すると共に現生植物の遺物同定のための対照標本の更なる充実が重要であることが明らかになってきており、次年度への大きな課題として残った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度はまだ資料調査を行えていない神奈川、富山、香川、大分等の各県の遺物調査及び試料収集を年度前半に行う。そして、編組製品等の素材可能植物として新たに必要であることが分かってきた植物種及びこれまでに採取されていなかった「部位」の蒐集に努め、そのプレパラートコレクション及び顕微鏡画像データベースを充実させる。 そして、2015年11月21日に予定されている国立歴史民俗博物館主催の歴博フォーラム「更に分かった縄文の植物利用」において本研究成果の主要な部分を発表すると共にその翌日に本科学研究費補助金による研究成果検討会を開催し、成果のとりまとめの方向に活動の重点を移す。 以上の研究成果を年度末までに取りまとめ、報告書を印刷物として刊行すると共にWeb上でも成果を公開する。
|