研究課題/領域番号 |
25242032
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 義久 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10173402)
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研究分担者 |
簗瀬 佳之 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00303868)
堤 洋樹 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (00329088)
森 拓郎 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (00335225)
栗崎 宏 富山県農林水産総合技術センター(農業研究所、森林研究所及び木材研究所), その他部局等, 研究員 (20446644)
吉村 剛 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40230809)
森 満範 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, その他 (60446341)
中島 正夫 関東学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70172319)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘルスモニタリング / 木造建築 / 生物劣化 / 耐震診断 / レーダ |
研究概要 |
平成26年度は木造建築の非破壊診断に最も適していると考えられるサブミリ波帯の電磁波をもちいたFMCW 方式のレーダ装置の開発と、その性能評価を進めた。 検出方式の原理確認や開発装置の仕様決定のための基礎実験および調査として、各種木質・非木質建材の誘電特性の評価、各種壁構造の材料や仕様の調査を行ったうえで、汎用のアンテナやVNAを用いた検出実験を行い、レーダの方式を決定した。さらに実験に供試するための劣化材として、木質建材をモデル的および人工的に促進劣化させる作業(菌類や木材加害昆虫への暴露)を行った。さらに一般住宅などの調査を通じて木質の壁体の実態や劣化特性を把握した。さらにシロアリや甲虫類などの生態や木部加害特性を評価するとともに、劣化による強度性能の低下を検討した。 壁体内部(構造と劣化)の非破壊評価のための電磁波検出方式を検討し、装置の基本設計を行い試験装置を試作した。特にアンテナの性能について、木質の壁体を適宜透過し、内部情報を反射波として検出できる条件を明らかにした。またリアルタイムで壁体内部からの反射波を分析および表示できるように検波および信号処理システムを構築した。試作した装置の基本性能を評価した上で、壁内部の構造および劣化の検出性能についてその基本的な能力を確認した。 装置の小型化および実用化のために、アンテナ部分と信号処理部分を一体化した小型の装置を試作した。また実用化に際して課題となる電波の漏れの対策を検討し、数種の解決策の可能性を確認した。診断のための画像処理技術については、診断画像に現れるノイズ成分の除去を含めて、反射型装置での3次元構造解析や可視化のためのアルゴリズムを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の最大の目的である木造住宅の大壁内部の構造や劣化状態を非破壊的に、かつ反射型の方式で、可視化するための原理を明らかにすることと、実用化を果たすことについては、概ね初期の目的を達成し、その実証例として小型のFMCW型レーダ装置を試作し、その性能を明らかにすることができた。また性能評価に必要となるモデル試験体の調整方法についても明らかにすることができ、実際に調整を開始することができた。さらに装置の汎用化に向けての取り組み課題や、改良仕様を設定するために必要となる実際の住宅壁の材料や仕様に関する情報も蓄積できた。さらに壁体の劣化の原因となる木材加害昆虫の生態や加害様式に関する知見も明らかにすることができた。 試作装置の性能については、木造住宅の外壁や間仕切り壁の標準的な仕様について、内部に配置されている金物や筋交い・間柱などといった構造要素の有無、種類や位置などを3次元データとして獲得することができ、このデータを用いて反射型装置でありながら3次元CT画像のような壁体内イメージング情報を獲得することができた。一方生物劣化については、腐朽や虫害を誘引する漏水・結露などによる壁体内の高含水率部位を抽出することができた。腐朽が促進される30%以上の高含水率部位を選択的に抽出する可能性が見出せた。また伝統的な土壁についても分解能は劣るものの、竹小舞の状態を認識することができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において設定した個別開発課題のうち、まだ充分達成できていない項目を中心に、試作装置を改良を行う。また本課題の成果をベースにした新規な開発の可能性を明らかにすることを目的とする。 試作装置の改良については、漏れ電波の抑制対策を充分に検討し、電波法に適合した装置とすることを目指す。その際、検出感度や分解能を低減させることがないように電磁波の発信や受信系、信号処理系の最適化を行う。また現状の装置よりも分解能や検出感度を改善するためのハードウェアとソフトウェアの改善も行う。 その一方で、外壁下地の水分の検査や仕様・構造確認といった特化した目的について検出能力を絞り込みながらかつ実用性の高い単能型装置の開発も試みる。さらにこの過程で装置の小型化、操作性、堅牢性などの実用面での性能改善も行う。 新規な開発課題としては、本装置の原理を用いた樹木のヘルスモニタリングの可能性について検討する。さらに住宅などの構造物の安全性を社会全体で管理・監視するためのセンサや維持管理情報ネットワークを構築する枠組みの中で、本開発課題の成果や課題をさらに検討する予定である。
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