研究課題/領域番号 |
25242035
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
越村 俊一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (50360847)
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研究分担者 |
奥村 誠 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00194514)
佐藤 翔輔 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (00614372)
山崎 文雄 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50220322)
松岡 昌志 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (80242311)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 自然災害 / シミュレーション工学 / 地理情報システム / 減災 |
研究実績の概要 |
今年度は,シミュレーションによる予測情報とセンシング等による把握情報の融合という視点で,災害の被害情報取得の高度化を目標に取り組んだ結果,以下に列挙する成果を得ることができた. 1)リアルタイムシミュレーション,センシング,空間情報処理を融合したリアルタイム津波浸水・被害予測技術の実証を,高知県,静岡県,宮城県をケーススタディとして行った.地震情報の自動取得と津波の発生予測(10分以内),津波伝播・浸水・被害予測(10分以内),結果の図化・配信を10mメッシュで行うという目標を「トリプル10(テン)チャレンジ」として達成したことに加え,東北大学のスーパーコンピュータに災害時モードを新たに導入し,いつ津波が発生しても迅速に予測ができるよう,スパコンの緊急利用技術を実用化した. 2)巨大津波災害の発生直後,広域に及ぶ津波被災地の被害を把握するには,リモートセンシング技術が必要である.様々なプラットフォーム・センサの中でも衛星搭載の合成開口レーダは被災地の撮像可能性が高いため,迅速な広域被害把握に期待が高い.津波被災前後の被災地を捉えたL-バンドSAR(ALOS/PALSAR)により,建物流失棟数を推計する手法を開発した.X-バンドSARによる解析に比べると精度が落ちるものの,災害発生直後の早期の被害全容把握には十分な精度(ピアソン積率相関係数=0.97)を得る事ができた. 3)被災地の生活支障や支援ニーズが被災地での被害程度に関連しているという仮説に立脚し,広域被害把握技術とモバイル端末等からのツイートデータの分析を融合し,被災地内の被害程度(浸水深,建物被害,人的被害)と生活支障や支援ニーズとの関連性を明らかにしようと試みた.現時点においては,震災発生前と震災発生後のツィートの空間的分布および増加特性と津波浸水域内の被害状況の関連性は見いだせていないが,引き続き丁寧な解析を行っていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設定した研究計画における各要素技術(リアルタイムシミュレーション,リモートセンシング,広域被害把握,ソーシャルセンシングによる被災地動態把握)に関する研究は順調に行われており,成果の積み重ねおよび成果の公表も順調である.
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今後の研究の推進方策 |
激甚な被災地の回復力を高めるために必要なことは,被害の全体像の推定・把握であり,その次に被害の程度に応じた救護・支援策を展開することである.前者の課題については,広域被害把握研究の枠組みが対応しており,我々の研究分野の成果が蓄積されている.一方,被災地内でどのような生活支障が生じ,激甚な被害からの回復に向けた支援が必要とされているかを早期に把握することは容易ではないが,SNS等の被災者自身が発信する情報が被災地の社会動態の理解に重要な役割を果たしうるという期待がある. 今後は,これまでの成果を踏まえ,以下の課題に取り組む. ・南海トラフの巨大地震・津波災害の即時的被害予測を目標に,リアルタイムシミュレーション手法の高度化に取り組む.シミュレーションには,発生する地震断層破壊メカニズムの不確実性を取り込み,最悪シナリオの予測ができるようにする. ・将来の大規模津波災害の広域被害把握を想定し,ALOS-2によって得られるLバンドSAR画像を用いた被害把握のフィージビリティスタディを行う. ・災地の生活支障や支援ニーズが被災地での被害程度に関連しているという仮説を立証する.広域被害把握技術とモバイル端末等からのツイートデータの分析を融合し,被災地内の被害程度(浸水深,建物被害,人的被害)と生活支障や支援ニーズとの関連性を明らかにする.
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