研究課題
基盤研究(A)
細胞の機能応答を均一化することを目指した力学環境制御方法として新しいマイクロパターニング方法(細胞内の応力を均一化する)の開発を行った。低真空放電と特殊なマスクを利用して、培養基板の任意の位置に細胞を配置(マイクロパターン化)できる方法を考案した。さらに、細胞の接着領域を調節することにより、所望の細胞形態を取らせるための装置開発に取り組んだ。ステッピングモーターを用いた数百マイクロメートルのスケールのパターン化には成功したものの、一方、圧電素子を用いた数マイクロメートルのスケールの微小なパターン化は装置の設計に不備があり十分な性能を得るに至らなかった。しかし、個々の細胞の移動領域を制限するという所期の目的は達成されたために、無限領域に接着領域をもつ通常培養基板に比べて均一化された力学環境を得ることができた。この特殊培養基板上で細胞が問題なく増殖することを確認した。そこで、このようにマイクロパターニングによって均一化された力学環境に対する細胞機能応答を調べるための準備を行った。特に細胞周期を可視化できるPremo FUCCI Cell Cycle Sensorをヒト骨肉腫U2OS細胞に導入し安定発現株を樹立した。その他にも数種類の細胞接着斑や細胞骨格成分に蛍光タグを付けたタンパク質の安定発現細胞株を作製した。これらを観察する系として新たにオプトライン/MESSIAを導入し、生化学因子によらずに細胞周期を均一化することができるかをライブセルイメージングする実験を開始した。特に、数日という長期に渡り安定的に共焦点観察を行うことができるように実験条件の最適化に取り組んだ。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた1.力学環境の均一化、および2.観察系の構築のいずれも計画の大部分を達成している。特にニポウ板共焦点系とLED光源を併用した観察系を立ち上げ、観察対象の細胞も複数の蛍光タンパク質安定発現株を樹立したことから、次年度以降、細胞応答の観察に速やかに移ることができるようになった。また、力学環境の均一化を目指したマイクロパターニングは独自方法を考案し、実用できる装置を製作した。マイクロパターニングの空間精度は当初の狙いに比べて十分でなく改良の余地が残されたが、機械装置の設計によって速やかな修正ができる問題であるために研究計画全体に影響を及ぼすものではない。
これまでおおむね順調に研究が進展していることから、特別な方策を取る必要はないと考えている。課題として引き続きマイクロパターニングの改良に取り組み、細胞応答のばらつきに及ぼす影響を調べる。これまで培養基板としてシリコーンエラストマーを利用していたが、今年度は別の材料についても試行し、これまでよりも広い応力の範囲で力学状態を均一化することができるか検討を行う。正確性の向上にも取り組み、マイクロパターニングのさらなる高性能化に焦点をおく。また、力学環境操作による細胞内応力状態の均一化の程度を定量化することにも取り組むとともに、コントロールとしての役割を想定して、化学的因子による影響も別途測定する。
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