研究課題
力学環境を均一化するために、これまでに細胞の形態を人為的に操作することができるマイクロパターン技術の開発に取り組んできた。力学環境に加えて、細胞周期状態も統一して解析を行うために、研究初年度(H25年度)に細胞周期マーカーであるPremo Fucci Cell Cycle Sensorを安定発現させたヒト骨肉腫細胞U2OS細胞を樹立した。本年度(H26年度)は、解析対象である細胞応答の一つとして、細胞発生張力に注目し、それを可視化するための新しい実験系の開発に取り組んだ。本方法では発生張力の大きい平滑筋細胞を対象としたときは、張力を十分に検出できたものの、上記のU2OS細胞では比較的張力が弱く、安定して計測を行うには至っていないために、次年度も引き続き研究を行う予定である。また、もう一つの細胞応答となる、引っ張り刺激に対する細胞の形態変化を、リアルタイム観察することができる新しい実験系を開発した。これは細胞数個分に相当する小さい培養面積の特殊ゴムチャンバーを製作し、そこに微小量の引っ張りが可能なピエゾアクチュエーターを取り付けたものである。従来的な大面積のゴムチャンバーでは生理的な大きさの引っ張り刺激と共に、細胞が観察範囲から移動して同一の細胞を追跡することが困難であるのに対して、本方法では引っ張り負荷を受ける同一の細胞をタイムラグなく継続撮影することができた。今後は上記の別途開発したマイクロパターンと併用し、細胞形態や細胞周期という環境・性状を均一化したうえで、引っ張り刺激に対する応答の多様性の変化を定量化することが課題である。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた力学環境の均一化と応答解析のいずれも計画の大部分を達成している。特に、力学環境の均一化を達成するために新しい細胞マイクロパターン技術を開発し、また細胞周期を把握するための蛍光マーカーを安定発現する細胞を樹立している。さらに、細胞発生張力を可視化する技術の基礎、および、細胞の引っ張り刺激応答を持続観察できる独自実験系の試作機を開発しており、その有効性の実証に成功しつつある。
これまでおおむね順調に研究が進展していることから、特別な方策を取る必要はないと考えている。課題として、細胞発生張力の可視化を、平滑筋細胞だけでなく、非筋細胞にも適用できるように、これまでより柔らかい基板材質を選定し、その機械的特性の評価などを経て有効性を実証することが挙げられる。また、本年度試作機を作製した引っ張り刺激時の細胞を観察する実験系を用いて、蛍光イメージングと併用し、実際に力学環境の均一化が及ぼす細胞応答への影響を調べることが課題の一つである。
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Cellular and Molecular Bioengineering
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