研究課題/領域番号 |
25242045
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
妹尾 昌治 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90243493)
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研究分担者 |
工藤 孝幸 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (00346412)
水谷 昭文 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (50598331)
日沼 州司 千里金蘭大学, 生活科学部, 教授 (60550522)
加来田 博貴 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80362961)
村上 宏 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90260174)
笠井 智成 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (30530191)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | iPS細胞 / がん幹細胞 / 根本治療 / 抗がん剤 / VEGFR-2 阻害剤 |
研究概要 |
人工多能性幹細胞(iPS細胞)から独自の方法により作成するがん幹細胞モデルを利用してがんを根本的に治療する方法論を確立することを目的とし、幹細胞からがん幹細胞を誘導する因子の同定、がん幹細胞分化誘導因子の同定、既存の抗がん剤の効果について検討した。 がん細胞が分泌するエクソソームが、iPS細胞からがん幹細胞を誘導する成分として機能するかについて検討するため、マウスルイス肺がん細胞株の培養上清より回収したエクソソームを供給しながら培養したiPS細胞をマウスに移植した。結果、移植マウスでは脂肪肉腫様の腫瘍形成が確認されたため、エクソソーム中にがん幹細胞誘導成分が存在すると判断した。 がん幹細胞の分化誘導因子の解析として、miPS-LLCcm細胞群中のがん幹細胞集団のみを選択的に培養した後、血管内皮細胞への分化能をin vitro tube formation assayにより評価した。がん幹細胞集団のみの培養を続けることにより、次第に血管内皮細胞への分化能を失っていくことを見いだした。 また、マウスiPS細胞から作成したマウスがん幹細胞で高発現している血管内皮増殖因子受容体 (VEGFR-2)を選択的に阻害する薬剤の分子デザインと合成、活性評価を行った。既存VEGFR-2阻害剤のうち、最も選択性が高く、活性の高いAMG-706をテンプレートとし、de novo 分子デザインを行い、VEGFR-2阻害剤候補化合物3400分子をバーチャルケミカルライブラリーとして得た。これらをケモインフォマティクスの手法により、分析・精査し、主に2つの化合物を選択して合成し、生物活性を調査した結果、ともに高いキナーゼ選択性でVEGFR-2を阻害することが分かった。またキナーゼ選択性、阻害活性を向上させるため、ヒンジ結合部分を付加したハイブリッド分子を設計・合成したところ、既存のVEGFR-2阻害剤と比較して最も高いキナーゼ選択性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工多能性幹細胞(iPS細胞)から独自の方法により作成するがん幹細胞モデルを利用して、腫瘍の部分的性質を標的する効果の明確な分子の創出およびその組み合わせを最適化してがんを根本的に治療できる創薬を目指し、幹細胞からがん幹細胞を誘導する因子の同定、がんワクチンの調整、がん幹細胞分化誘導因子の同定、既存の抗がん剤の効果について検討を行った。 幹細胞からがん幹細胞を誘導する因子の同定について、エクソソーム中にがん幹細胞誘導成分が存在すると判断できる結果を得た。 がんワクチンの調整については、まずDDS技術を利用したがん幹細胞に有効な治療法の開発に向けた基盤技術の確立を目指し、リポソームにsiRNAやタンパク質を内包させ、その安定性について検証して、熱に非常に安定な構造であるリポソームを作製した。 がん幹細胞の分化誘導因子の解析においても、がん幹細胞集団のみの培養を続けることで、細胞分化能を失っていくことを見いだした。 既存の抗がん剤の効果については、VEGFR-2阻害剤候補化合物を合成し、それらとVEGFR-2とのドッキングシミュレーションを基に、ヒンジ結合部分を付加したハイブリッド分子を設計・合成した。この化合物は、既存のVEGFR-2阻害剤と比較して最も高いキナーゼ選択性を示した。 以上より、計画は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、以下4項目を遂行して、がん幹細胞を中心に腫瘍全体をその部分的性質を標的する抗がん効果の明確な分子の創出およびその組み合わせを最適化し、がんを根本的に治療できる創薬を目指す。 1.幹細胞からがん幹細胞を誘導する因子の同定:がん細胞よりエクソソームを回収し、その内容物の解析を行う。マイクロRNAに着目し解析を進め、特徴的なマイクロRNAが見いだされた場合、それをiPS細胞に導入し、がん幹細胞が誘導されるかについて検証する。 2.がんワクチンの調整:DDS技術を利用した癌幹細胞に有効な治療法の開発に向けた基盤技術を確立すること目指す。DDSの基本技術として主にリポソームを利用し、高分子の物質を内封するリポソームを形成する脂質組成の検討を進める。 3.がん幹細胞分化誘導因子の同定:BalbマウスへのC26細胞の腹膜播種を行い,本マウスにおけるRXRモジュレーターの有効性を確認する.さらに、宿主と同系統の幹細胞から作製したがん幹細胞を移植した胆がんマウスを作製し、薬効評価を行う。また、化合物ライブラリーを中心とした分化を誘導する因子の探索を行う。 4.既存抗がん剤の効果の検討:VEGFR-2阻害剤をテンプレートとする新規阻害剤の設計と合成を行うと同時に、阻害活性およびキナーゼ選択性について調査する。得られた結果とがん幹細胞に特徴的なキナーゼ発現情報をもとに、がん幹細胞特異的キナーゼ阻害剤開発を行う。
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