研究課題/領域番号 |
25242047
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森 健策 名古屋大学, 情報連携統括本部, 教授 (10293664)
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研究分担者 |
北坂 孝幸 愛知工業大学, 情報科学部, 准教授 (00362294)
小田 昌宏 名古屋大学, 情報科学研究科, 助教 (30554810)
二村 幸孝 名古屋大学, 情報連携統括本部, 研究員 (70402477)
三澤 一成 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍病理学部, 研究員 (70538438)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コンピュータ外科学 / 医用画像処理 / 診断治療支援 |
研究概要 |
内視鏡診断治療支援のための「モダリティシームレスナビゲーション」技術の確立とその臨床的評価を目的とし、平成25年度はモダリティシームレスナビゲーションの学術的概念の確立、臓器形状数理的表現法の検討、臓器超精密局所解剖表現法の検討、臓器形状データベースの検討、超精密局所解剖学的構造データベースの検討を行った。以下に各研究項目についての実績を述べる。 【モダリティシームレスナビゲーションの学術的概念の確立】CT画像と超音波画像からなるマルチモダリティ医用画像を対象とし、各画像から得られる治療支援情報の洗い出し、2つのモダリティ医用画像の位置合わせによる統合手法の考案、これらの情報を組み合わせモダリティシームレスナビゲーションを行う方法について検討した。【上部消化管形状数理的表現法の検討】多数の患者の上部消化管形状を基に形状変化の傾向を解析し、上部消化管表面に沿った座標系を定義することで、形状を表現する方法を検討した。上部消化管の中心線を抽出し、これを利用して上部消化管座標系を求める手法についても検討した。【上部消化管超精密局所解剖表現法の検討】上部消化管周辺のリンパ節の位置関係を自動検出する手法について検討した。【上部消化管形状データベースの検討】多数のCT画像を用いて、上部消化管の位置と形状のバリエーションを蓄積したデータベースについて検討した。【上部消化管超精密局所解剖学的構造データベースの構築】上腹部CT画像から「上部消化管超精密局所解剖表現法の検討」において求めた結果を用い、上部消化管の局所解剖構造を表現した情報を格納したデータベースについて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画として定めた以下の項目について達成度を述べる。 【モダリティシームレスナビゲーションの学術的概念の確立】マルチモダリティ医用画像から得られる治療支援情報の列挙、マルチモダリティ医用画像の位置合わせによる統合手法の考案などを検討した。CT画像上での胃がんの発見と、治療時に、CT画像と超音波画像を組み合わせ胃がんの場所へと医師を誘導する方法を検討し、実際の治療において利用可能なナビゲーションシステム開発につながる要素技術を検討した。【上部消化管形状数理的表現法の検討】上部消化管の中心線を抽出し、中心線を基準として上部消化管表面形状の座標系を求めた。多数の患者の上部消化管形状を基に形状変化の傾向を解析し、座標系の上での形状変化の表現を試みた。【上部消化管超精密局所解剖表現法の検討】上部消化管周辺の血管とリンパ節の位置関係をCT画像の座標系と関連付けて表現する方法を考案した。医学分野において参照される解剖学図譜と対応付けて血管とリンパ節の位置を参照可能とした。【上部消化管形状データベースの検討と構築】177例のCT画像と内視鏡挿入時に撮影した超音波画像(20例)、胃標本写真(100例)を用いて、上部消化管の位置と形状のバリエーションを画像として蓄積したデータベースを構築した。また、上部消化管の病変やリンパ節を上部消化管に関連付けて記録することも可能である。【上部消化管超精密局所解剖学的構造データベースの構築】上腹部CT画像から上部消化管の局所解剖構造を表現した情報を格納したデータベースを構築した。 上記のように本研究課題を遂行した。モダリティシームレスナビゲーションシステムを開発するために、実際の手術に基づいた検討を何度も行い、実際の手術ナビゲーションに即応用可能なナビゲーションシステムを検討した。そのため、当初の計画以上に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後行う予定の各研究課題について以下で説明を加える。 【上部消化管早期病変データベースの構築】早期病変の発見と治療は重要である。そのため、上部消化管に早期病変が存在する症例を多数収集し、マルチモダリティ医用画像上での早期病変の形状計測、浸潤度評価などを行う。 【モダリティシームレスナビゲーションのための画像認識理解手法開発】CT画像から上部消化管の解剖学的構造を自動認識理解する手法を実現する。入力画像とデータベース上の情報とのマッチングにより、解剖学的構造の自動認識理解のための情報を得て、高精度な認識理解を実行する。その後、上部消化管からの早期病変自動検出を行う。病変の形状、病変周囲の血管走行状態とリンパ節の位置・形状などの関連性を調べ、これを基に早期病変を自動検出する。また、超音波画像・共焦点内視鏡画像から局所解剖構造と早期病変位置を自動的に認識理解する手法を開発する。あらかじめCT画像から得た局所解剖構造情報などを利用してこれを行う。 【多種画像モダリティシームレス統合に基づく内視鏡診断治療支援手法の実現】上部消化管の仮想展開像を作成する手法を開発する。上部消化管は内視鏡検査時に大きく変形するため、CT画像上と治療時の上部消化管形状の対応付けが必要である。上部消化管の変形を推定する手法の開発を行う。この変形推定結果を用いて、上部消化管の内視鏡検査中に内視鏡先端位置がどこであるか推定する手法を開発する。これまで研究成果を基に、上部消化管診断検査支援システムを開発する。このシステムでは仮想展開像、仮想化内視鏡画像などを統合的かつモダリティシームレスに表示する。 【臨床の場における評価とそれに基づく手法改善】多数の症例を用いて臨床の場で本システムを評価する。評価結果に基づき、システム改善・機能追加などを行い、上部消化管領域における早期病変内視鏡診断治療支援システムの完成度を高める。
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