研究課題/領域番号 |
25242057
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
井野 秀一 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究グループ長 (70250511)
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研究分担者 |
榊 浩司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創エネルギー研究部門, 主任研究員 (20392615)
土井 幸輝 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 教育研修情報部, 主任研究員 (10409667)
和田 親宗 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 准教授 (50281837)
山下 和彦 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (00370198)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人間生活環境 / 医療・福祉 / 防災 / 水素吸蔵合金 / アクチュエータ |
研究実績の概要 |
本研究課題では、高齢者や障害のある人たちの日常の自立生活と非常時のレスキューをサポートする「人間生活調和型アクチュエータ」のための新たな技術創出を目指した研究開発を行っている。本年度は、前年度に引き続き、「人間生活調和型アクチュエータシステムの基盤研究」の研究課題を展開すると共に、研究遂行の中盤で主体となる「ホームケアおよび家庭用防災のサポート技術のための人間工学的研究」について着手した。まず、合金開発については、これまでのLa-Ni系と異なる組成のZr-Ti-Mn系に着目したアクチュエータ向けの新しい水素吸蔵合金のレシピを考案し、そのサンプルを試作した。この合金は、高価なレアメタルを含まず、組成調整によりアクチュエータの安定駆動に適した圧力生成に資する諸特性を具備することを、ヒステリシスおよびプラトーの平坦性に対する添加元素の効果を調べることで確認した。その一方で、合金活性化に要する圧力条件等の課題の存在が認められた。次に、新合金を充填した水素吸蔵合金アクチュエータの試験器による簡易的な動作試験を行った。その結果、およそ10gの合金で60kgの錘をリフトできること(高出力重量比)がわかった。さらに、合金利用の利便性向上のための周辺技術開発では、製紙技術によりシート化した合金と駆動部にラミネート材料を用いたソフトベローズを利用して、手のひらサイズのソフトアクチュエータのプロトタイプを試作した。また、ホームケアのためのデバイス開発の基礎データを構築する人間工学的研究については、高齢者等のトイレでの立ち上がり、転倒予防、介護支援のためのコンパクトアクチュエータの設計仕様を探る予備実験を行った。その結果、トイレを想定した座面のポジションを変化させることで、起立動作時の身体負荷に様々な影響を与えることが下肢の筋電図パターン等から推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に引き続き、人間生活調和型アクチュエータシステムの基盤研究としての合金開発と周辺技術開発を推進した。合金開発では、従来の水素吸蔵合金アクチュエータに利用していた合金とは異なる組成のZr-Ti-Mn系の新合金の性能試験を多角的に行い、その有用性を実験的に検証できた。周辺技術開発では、ホームケア支援のデバイス開発に関連して、合金粉末の柔らかなシート化を製紙技術の応用により進め、手のひらサイズのソフトアクチュエータのプロトタイプを試作した。また、今後のシステム設計の基礎データを得るための人間工学研究では、トイレの便座からの立ち上がりや高齢者等の介護支援および転倒予防を想定した予備実験を行い、支援機器のデザインに必要な計測パラメータを俯瞰することができた。なお、新合金の開発過程において活性化条件に関する課題が生じたが、圧力条件の調整により回避でき、新合金を導入した実験用アクチュエータによる簡易動作テストを実施することができた。以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、人間生活調和型アクチュエータシステムの基盤研究を分野横断的に実施し、国内外の学会などでの成果発表を積極的に行う。また、これらの材料開発などのマテリアルサイエンスに基づく要素技術研究と同時並行で、ホームケアおよび家庭用防災のサポート技術のための人間工学的研究を動作計測や生理計測などによって展開する。さらに、生体計測等から得られた基礎データを土台として人間中心デザインのコンパクトアクチュエータを設計し、そのプロトタイプ開発を漸次に行い、介護や防災の現場ニーズを基軸とした異分野連携のプロジェクトスタイルで、本研究を推進する。
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