研究課題/領域番号 |
25242067
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
野口 博司 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (60126141)
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研究分担者 |
森田 洋行 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (20416663)
梅原 薫 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (40185070)
渡辺 賢二 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (50360938)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Type III PKS / polyketide synthase / OAC / 酵素工学 / ポリケタイド / 閉環酵素 |
研究概要 |
アサ由来オリベトール酸閉環酵素(OAC)は、アサのIII型ポリケタイド合成酵素(PKS)がヘキサノイルCoAと3分子のマロニルCoAから生産するテトラケタイド中間体に作用して、カンナビノイドの生合成中間体オリベトール酸へと閉環する全くあたらしいタイプの新規閉環酵素である。本研究では、様々な骨格を有するアシルCoAエステルとマロニルCoAを基質とした触媒タイプの異なるIII型PKSの酵素反応液にOACを加えることにより、新規化合物の生産を目指した。その結果、ヘキサノイルCoAとマロニルCoAを基質としたキダチアロエ由来オクタケタイド合成酵素(OKS)とOACの共反応液中に、OAC共存下においてのみ生成する新規化合物の存在をLC-MS解析によって見いだした。その分子量から、ヘキサノイルCoAに6分子のマロニルCoAが縮合して生成したビフェニルまたはナフタレン類縁体であると考察される。一方、ヘキサノイルCoAよりも炭素鎖の短いブチリルCoAや炭素鎖の長いオクタノイルCoA等をヘキサノイルCoAの代わりに作用させた場合には、いずれにおいても新規化合物の生成は確認出来なかった。そこで、OACの基質特異性と触媒機構の解明を目指し、OACの立体構造解析を行った。まず、X線結晶構造解析を行った結果、1.4Å;の分解能でOACアポ型の結晶構造の取得に成功した。さらに溶液NMR解析を実施したところ、解析レベルの良好なシグナルを観測することができた。今後、これら立体構造情報の活用により、OACの詳細な触媒機構の解明と、OACの機能改変およびそれら機能改変酵素を用いた新規化合物群の創出が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画においては、様々なタイプのIII型PKSとOACやそのホモログ酵素を組み合わせ、これに様々な骨格のアシルCoAをマロニルCoAとともに作用させ、新規化合物を生産すること、および、OACの結晶の取得までを達成目標としていた。新規化合物の生産については、構造決定にまで至ってはいないものの、概ね計画通りに進行していると判断している。OACの結晶化については、当初予定していたよりも早く結晶が得られ、OACアポ型の結晶構造の取得まで至っており、計画よりも順調に進んでいると判断している。さらにOACの溶液NMR構造の取得も実現しつつある。総合的には、概ね計画通りに進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において得られた新規化合物の構造決定を早急に進めると同時に、OACの立体構造情報をもとに、基質特異性や触媒機構の解析を行う。この際には、その情報に基づき変異を導入し、反応生成物を精査することで、立体構造との整合性を図るとともに、OACと基質アナログ等との複合体立体構造解析に着手し、触媒機構の解明に取り組む。OACの変異酵素の作成については、基質特異性等の改変も含めて行うことにより、さらなる新規化合物群の創出を目指す。
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