研究課題/領域番号 |
25242069
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
上村 大輔 神奈川大学, 理学部, 教授 (00022731)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 天然物化学 / クロイソカイメン / ハリクロームA / 生合成経路 / インドール誘導体 / メタゲノム |
研究実績の概要 |
クロイソカイメンを材料とし、メタゲノム法で新規天然物質の創製を計画した。物質生産クラスターの大きさに左右されるとの考察をもとにBACベクターの構築に挑んだ。BACベクターとして、放線菌ファージ由来のインテグラーゼ遺伝子、薬剤耐性遺伝子等を導入することで、大腸菌-放線菌シャトル・BACベクターを構築し、放線菌Streptomyces griseusを宿主に放線菌ライブラリーを構築することに成功した。酵母を用いての抗真菌活性を指標とした物質スクリーニングを現在行っている。以前、クロイソカイメン共生バクテリア遺伝子のFosmidライブラリーより新規ビスインドール化合物halichrome Aを単離・報告した。色素生産株のフォスミド遺伝子を次世代シークエンサーで解読し、20個以上のORFの同定に成功した。その中のmonooxygenase遺伝子をBL21株で発現させ、Indigo、 Indirubin等のビスインドール化合物の生産に成功した。遺伝子破壊実験等により本化合物の生産に関与する約10 kbの生合成クラスターを推定した。 さらに本年度は、新規化合物halichrome Aの構造をもとに、多数の誘導体の構築に成功した。本誘導体群はインドールの各種ベンゼンスルホニル基導入体に対応し、マウスメラノーマB16細胞に対してhalichrome Aよりも強い細胞増殖阻害活性を示すことが判明した。また、30以上の新規活性物質の開発にも成功し、すでに特許を取得している。 これらの内容は一部、日本化学会年会、天然物討論会における口頭発表およびポスター発表等で紹介し、現在論文発表を急いでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗菌性新規物質生産の確認が遅れているが、全体的には予想通りの成果が出ているので、上記の自己評価とした。特に、カイメンという複雑な生物系より取得したメタゲノムDNAライブラリーを効率的に利用できるようにした点や新規化合物halichrome Aの生合成クラスターの解析を進展させた点を考えれば、予定以上に進捗したと言える。またhalichrome A誘導体に関しては30以上の新規化合物の合成に成功し、なかには前立腺がんに効果のあるものも発見できた。残りの研究期間を十分に活用して、本計画をより一層加速、発展させて学術面のみならず、社会に対して貢献したい。
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今後の研究の推進方策 |
1)スクリーニング効率の改善;メタゲノムライブラリーに関してはアッセイ系を工夫することでスクリーニング効率の向上を試み、メタゲノムの分離条件を工夫することでサンプル調整の段階での改善を試みる。
2)halichrome Aの生合成経路の解析;すでにmonooxygenaseの異種発現実験に成功しており、同様の手法で機能解析を進めていく。in silico解析に加え、in vivoあるいはin vitroの実験を進めることでhalichrome Aの生合成系を明らかにできると考えている。
3)halichrome A誘導体の側鎖の改良;側鎖の疎水性、電子吸引性が活性に影響を与えることを見出しており、今後はより幅広い置換基の付加を検討し、有用な医薬リードの開発を目指す。
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