トラウマとジェンダーの相互作用を、(1)精神病理や臨床的側面から、(2)犯罪行為や逸脱現象の側面から、(3)当事者の自助グループやメディア発信・アート表象など文化創造的な側面から探り、明らかにすることを目的に、年間テーマを「グローバル社会のトラウマとジェンダー: 精神病理・逸脱・創造性」として以下の研究活動を行った。フィールド調査の他、国内外の学会における研究者らとの意見交換、事例検討や共同研究を進めた。また、論文執筆、会議・ワークショップの企画開催、国内外における講演、英語圏でのラジオ出演などにより研究成果の国際的な発信を行った。 特に、 (1)では、平成28年度共同研究会議を開催し、トラウマの最新の臨床実践について議論した。オートノミートレーニングを用いた慢性疾患へのアプローチや、ブレインジムなどの身体技法による解離症状へのアプローチについて、事例を交えて検討した。(2)では後藤は、女子刑務所のあり方研究会への参加や、刑務所や少年院の参観、ダルク女性ハウスにおける女性薬物依存症者とのミーティングを通じて、女性犯罪者が刑事司法の中で自分の声を取り戻し、社会復帰を目指すための法的支援のあり方について検討し、論文にまとめた。NPO法人子ども権利センター帆希を運営すると共に、関連機関との連携等について検討を行った。 (3)では宮地は、性暴力被害をうけたサバイバー男性の当事者によるNPO、Male Survivors of Sexual Abuse Trust でのフィールドワークを行い、語りやアート制作といったトラウマの多様な表象などをテーマに、ピア・カウンセリングへの参与観察、当事者および支援者へのインタビューなどを実施した。青山は同性婚制度やセックス・ワーカーの権利等について論文執筆・研究発表を行った。
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