研究課題/領域番号 |
25244001
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
加藤 泰史 一橋大学, 社会学研究科, 教授 (90183780)
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研究分担者 |
宇佐美 公生 岩手大学, 教育学部, 教授 (30183750)
齋藤 純一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60205648)
松井 佳子 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (60255180)
大河内 泰樹 一橋大学, 社会学研究科, 教授 (80513374)
品川 哲彦 関西大学, 文学部, 教授 (90226134)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人間の尊厳 / 生命の尊厳 / 高齢者の尊厳 / 多元主義 / 民主主義 / 障碍者の尊厳 / 尊厳死 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究計画にもとづき、分担者および連携研究者等と研究打ち合わせ等を行ない、平成27年度の計画を確認すると同時に、9月に古代哲学者・生命倫理学・認知哲学者・臨床看護師などを招聘して「認知患者の尊厳」「尊厳死の問題」「看護師と患者の関係性」等に関連した国内ワークショップ(一橋哲学フォーラムおよびドイツ応用倫理学研究会等と共催)を開催した。 10月にはシュテッカー教授(ビーレフェルト大学)・シマダ教授(デュッセルドルフ大学)を招聘して「障碍者の尊厳」や「高齢者の尊厳」に関連した国際ワークショップを(Hitotsubashi International Conferenceおよびドイツ応用倫理学研究会と共催)開催した。この国際ワークショップでは特にシュテッカー教授の尊厳概念の多様性を指摘した議論が注目を集め、それをめぐって活発な議論が行なわれた。 平成28年1月には渡独してドレスデンのシェーンリッヒ教授と今後の共同研究に関して意見を交換し、カントの尊厳概念に関する論文集の企画を立ち上げることに合意した。 3月にはデュッセルドルフ大学でガストマンス教授(ルーヴァン大学)・シャーバー教授(チューリッヒ大学)を招聘して「高齢者の介護と尊厳死」「被造物の尊厳」に関連した国際ワークショップを開催した。ベルギーではすでに安楽死が合法化されておりその現状を巡り活発な討論が行なわれた。また、スイス憲法の「被造物の尊厳」を巡る議論もそれが微生物にまで拡張できるのかどうかという問題は日本の「生命の尊厳」の理解にも関わり大変貴重な論点を提供してもらえた。3月末にはカーター教授(フライブルク大学)を招聘して研究会を開催して最近の哲学的人間学の観点からの「人格」解釈に関する新たな知見を得ることができた。また、1月に修正した『ドイツ応用倫理学研究』第5号を公刊するとともに、第6号の編集に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているとした理由としては、(1)当初予定していた国内ワークショップや国際ワークショップ、さらに著名な国内外の研究者の招聘や国際ワークショップへの参加などが予定通りに行なわれ、特に10月に一橋大学で、そして3月にデュッセルドルフ大学で開催した国際ワークショップでは日本・ドイツ・スイス・ベルギーの研究者の研究発表に大変学問的に触発されて討論内容が深化したこと、(2)シェーンリッヒ教授と検討したカントの尊厳概念に関する論文集企画に関して、内外の研究者たちと協議してその具体化に向かって一歩を踏み出すことができたこと、(3)第四年度目に向けて哲学だけではなく(哲学に関しては「尊厳」概念に関わるより基礎的な研究発表の場も継続して設定する予定であり、この準備も進んでいる)、法学・法哲学・都市論・社会福祉論や障碍者・高齢者介護、日本文学・日本哲学などの領域に関連した研究者と国際ワークショプ開催に向けて招聘の準備や国際ワークショップ参加の準備などが具体的に着実に進展しつつあること、(4)これまでの研究成果の一部を雑誌の特集号として公刊する見通しが立ったことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策に関しては、平成27年度と同様に次の二方策を継続して行なう。一つは、ワークショップ・フォーラム・研究会などを開催して内外の研究者を招聘したり研究代表者・研究分担者・連携研究者・研究協力者らが研究発表を行なうことによってそれぞれの研究課題を具体的に進展させてゆくものであり、もう一つは、国際ワークショップを一橋大学で少なくとも二回は開催してそのつどの研究成果を海外にも発信することで欧米の研究者からの反応を踏まえながら、海外の研究者との相互交流(海外研究者の招聘および海外研究者訪問など)を積極的に行なうことによって、特にドイツの研究者との共同研究を具体的にさらに進展させてゆくものである。 これら二方策にもとづく研究成果を『ドイツ応用倫理学研究』で取りまとめて公表したり他の雑誌で特集号を企画して公表するとともに、さらにこれまでの研究成果をシリーズとして編集すると同時に、カントの尊厳関係の論文集の企画も視野に入れてゆく予定である。
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