研究課題/領域番号 |
25244010
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研究機関 | 東北芸術工科大学 |
研究代表者 |
根岸 吉太郎 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 教授 (20626147)
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研究分担者 |
林 政槻 (林海象) 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 教授 (00647406)
阿部 宏慈 山形大学, 人文学部, 教授 (10167934)
岩井 天志 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 准教授 (10453375)
前田 哲 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 准教授 (40626157)
村山 匡一郎 日本大学, 芸術学部, 教授 (40715231)
磯見 俊裕 東京藝術大学, その他の研究科, 教授 (50420295)
西村 宜起 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 教授 (90244996)
加藤 到 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 教授 (90254854)
北小路 隆志 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (90649831)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | デジタルシネマ / 映画国際研究者交流 / 映画教育 / 4Kシネマ |
研究実績の概要 |
本研究の平成27年度は、デジタルシネマ時代の上映形式をめぐる議論を国際的な観点からより一層深め、研究を展開するため、2回のシンポジウムを開催した。詳細を下記に記す。 1)国内外から映画関係者が多数集まる山形国際ドキュメンタリー映画祭2015の期間中、映画祭の共催のもとに2015年10月12日に開催した。基調講演として、映画批評家のクリス・フジワラ氏を招聘し、世界映画史と現在におけるDCP及びデジタル環境が観客を念頭にした映画の上映にどのような影響を及ぼしているか、講演を展開して頂いた。パネルディスカッションでは、各分野の専門家を招聘し、専門の立場から現状の認識と問題点を共有、議論を進めた。これによってDCPの技術研究と普及が緊急に要請されていることが明らかとなるとともに、DCPに止まらない、映画・映像の上映及び鑑賞をめぐるデジタル技術下での映画のあり方そのものに視座をおく必要があることが確認された。また、翌13日には、本研究において制作した映像フッテージ及び短編映画『GOOD YEAR』(林海象監督)をDCPにおいて、シアターで上映。観客とともに映像を見比べ、検証を行った。 2)2016年3月5日6日の2日間にわたって、山形の文化スペースとして新たにオープンしたKUGURU(とんがりビル内)にてディスカッションと上映のかたちで開催。研究者・映画監督を招聘し、小規模映画の制作・上映・鑑賞をめぐって、研究者や一般の来場者を交え、より具体的な議論を展開した。また、作品上映も行い、作品を実際に鑑賞して進めることで、机上の議論に止まらない、より実践的な研究の進展を試み、映画・映像表現そのものと上映形式の関係を根本から考えていくことなど、今後への視座を高めた。 一方で、DCP制作の技術的な研究もテストを重ねることで引き続き進め、研究の終盤を迎えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、研究を具体的に展開するために国内外から専門家を招聘することで、議論を進め、本研究によって見出すべき方向性を獲得したといえる。具体的には、2015年10月12日のシンポジウムでは、基調講演として、映画批評家のクリス・フジワラ氏を招聘し、世界映画史と現在におけるDCP及びデジタル環境が観客を念頭にした映画の上映にどのような影響を及ぼしているか、講演を展開して頂いた。パネルディスカッションでは、ロッテルダム国際映画祭のプログラマーであるジュリアン・ロス氏、東京国立近代美術館フィルムセンターで映画の保存・活用を主に調査されている三浦和己氏、映画監督のジャン・ユンカーマン氏、キャメラマンの加藤孝信氏を招聘し、各者専門の立場から現状の認識と問題点を共有、議論を進めた。2016年3月5日6日の2日間には、NPO法人独立映画鍋共同代表の土屋豊氏、韓国ソウルの市民映像メディアセンター・メディアクト所長のキム・ミョンジュン氏、東京都写真美術館学芸員の田坂博子氏、映画作家の牧野貴氏、映画監督のムン・ジョンヒョン氏を招聘し、小規模映画の制作・上映・鑑賞をめぐって、研究者や一般の来場者を交え、より具体的な議論を展開した。こうしたことから、映画・映像表現そのものと上映形式の関係を根本から考えていくことなど、今後への視座を高めた。 こうした議論の蓄積により、本研究で進めてきたDCPの技術研究を相乗的に高めることで、研究成果発表に向けた体勢を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年次である今年度は、技術的な研究成果と平成27年度に交わされた議論の内容を含めた最終報告書の作成によって、映画史、映像技術、映画産業といった多角的な方向から成果発表を行う。 報告書では、本研究分担者である根岸吉太郎が総合的な研究の成果報告を担当するほか、加藤到がDCPを含めたデジタルシネマ時代の小規模映画上映の現状と問題点を整理し、林政槻が実際の映画制作の面からデジタルシネマの方向性を検証、西村宜起が現在の国際映画祭におけるデジタルシネマの表現としてのあり方や産業としてのあり方をまとめていく。また、研究協力者からの論考の発表も含む予定である。 この報告書の作成と各機関や実践者への配布によって、デジタルシネマ時代の小規模映画制作者及び上映者、鑑賞者に向けて門戸を開いていく。 また、本研究から映画・映像の修復・保存・保管をめぐる研究の必要が見出されており、研究の継続性を必要としている。
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