研究課題/領域番号 |
25244033
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
関尾 史郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70179331)
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研究分担者 |
伊藤 敏雄 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00184672)
角谷 常子 奈良大学, 文学部, 教授 (00280032)
安部 聡一郎 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (10345647)
永田 拓治 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (40623393)
町田 隆吉 桜美林大学, 人文学系, 教授 (50316923)
阿部 幸信 中央大学, 文学部, 教授 (60346731)
鷲尾 祐子 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (60642345)
高村 武幸 明治大学, 文学部, 准教授 (90571547)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | 東洋史 / 考古学 / 木簡学 / 中国古代史 / 地方行政システム / 地域社会 / 吏民簿 / 東アジア |
研究実績の概要 |
1)研究対象としている新出簡牘のうち,長沙走馬楼呉簡については,2015年8月に,長沙簡牘博物館において実見・計測・撮影に従事した.その成果については,本プロジェクトの母体でもある長沙呉簡研究会において報告を行い,情報の共有を図った.新刊の『長沙走馬楼三国呉簡 竹簡捌』を得て,データベース作成の準備作業に入った. 2)プロジェクト活動が3年目に入ったので,中間報告のために,2015年9月20日,東京大学本郷キャンパスにおいて,国際シンポジウム「後漢・魏晋簡牘研究の現在」を開催して4本の報告を行なった.これに対して,日本・中国・台湾・韓国の4人のコメンテーターから外部評価を受けた.シンポジウムの総説では,後漢(とくにその後半期ないしは2世紀以降)や魏晋・五胡十六国時代の研究は,もはや簡牘への関心なくしては成り立たないこと,甘粛臨澤西晋簡の紀年は313年で,朝鮮半島の楽浪・帯方両郡がそれぞれ高句麗・百済に陥落した年であること,すなわち,涼州の張掖郡臨澤県で,簡牘がなお地方行政の場で用いられていたとすれば,同じ西晋の支配下にあった平州の楽浪郡や帯方郡でも簡牘が地方行政の場で用いられていた可能性がきわめて高いこと,そのような簡牘をベースとした行政システムが高句麗や百済,ひいては新羅に移入されたと考えるべきであることなどが述べられた. 3)研究目的との関連で明らかになった問題は以下の通りである.a)長沙走馬楼呉簡の吏民簿については,作成主体は郷であり里ではないこと(ただし,里の責任において原本が作成されたこと),b)地方長官の指示・命令である「教」は,長沙走馬楼呉簡のみならず5世紀半ばの吐魯番文書にも見られること,また「賜教」という成語は,さらに韓国・慶州出土の新羅木簡にも継承されていること,この木簡は吏読の最初期の事例とされてきたが,「賜」は丁寧語の接尾詞とは言えないことなどである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新出簡牘のうち,最大の史料群である長沙走馬楼呉簡のうち,『長沙走馬楼三国呉簡 竹簡伍』と同『竹簡陸』の刊行が遅れており,データベース化も,これを用いた研究も目処が立っていないが,それ以外はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
1)『長沙走馬楼出土三国呉簡 竹簡捌』のデータベースを2016年夏までに完成させ,研究に活用する.また同じく新刊の『長沙五一広場東漢簡牘選釈』についても,同様な対応の可能性を見当する. 2)2016年度は最終年度なので,2016年8月27・28日に予定されている「紀念長沙走馬楼三国呉簡出土20周年国際学術研討会」(長沙市人民政府・故宮博物館主弁,長沙市)にペーパーを提出する. 3)最終成果を論集『後漢・魏晋簡牘の世界』(仮題)として刊行するため,その準備報告を本プロジェクトの母体でもある長沙呉簡研究会の例会で行なう. 4)今までの実見・計測・撮影結果については,2016年度末に刊行予定の科研費報告書に掲載する. 5)最終年度であるため,2016年度は簡牘の実見調査は予定されていない.
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