研究課題/領域番号 |
25244044
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
植野 弘子 東洋大学, 社会学部, 教授 (40183016)
|
研究分担者 |
崔 吉城 東亜大学, 人間科学部, 教授 (80236794)
鈴木 文子 佛教大学, 歴史学部, 教授 (40252887)
角南 聡一郎 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 主任研究員 (50321948)
上水流 久彦 県立広島大学, 地域連携センター, 准教授 (50364104)
谷ヶ城 秀吉 専修大学, 経済学部, 准教授 (30508388)
八尾 祥平 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究所員 (90630731)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 文化人類学 / 帝国日本 / 移動 / 他者像 / 台湾 / 朝鮮半島 / 沖縄 / モノ |
研究実績の概要 |
(1)各自の調査活動-実施計画で挙げた4つの視点から、調査研究活動を行った。 ①「帝国日本」の全体的枠組みを視野に入れた研究では、崔吉城は植民地・占領地の記録の在り方について考察した。上水流久彦は、近代建築物に関する歴史認識について、韓国、台湾、日本、旧「満州」において比較のための調査を遂行した。鈴木文子は、在朝鮮日本人の戦時期の食糧事情や動員状況に関して、階層間、また民族間の差異の調査を行った。谷ヶ城秀吉は、戦前期における総合商社に関する資料収集を進めた。角南聡一郎は、韓国・台湾において、近代化の所産としての表札の調査を行った。また、研究協力者の全京秀は、帝国内で活動した日本人研究者・朝鮮人研究者に関して論文を執筆している。研究協力者の林玉茹は、帝国内でのモノの移動について、税関の役割に注目して研究を行った。②現在からの視点をもった研究は、崔や上水流の研究がこれにあたり、また植野弘子は、台湾に移入された近代的物質から生まれた他者像の変化に関する資料収集を行った。③帝国内の対「日本」以外の関係では、八尾祥平が、台湾との関連で沖縄の戦後糖業・パイン業の隆盛について、日本帝国期との連続性や「外地」との関連について調査している。研究協力者の松田良孝は、沖縄県宮古地方に移住した台湾系住民の実態に関する調査を進め、八重山と比較研究をしている。さらに、連携研究者の林史樹は、韓国における中華料理の伝播について調査を進め、植民地化以降の変化を探っている。④帝国日本の特異性については、台湾と朝鮮の比較から考察を始めているが、まだ議論が足りておらず、今後の課題となっている。(研究協力者の名前を公開することには、合意を得ている) (2)台湾での共同調査―台湾における歴史認識に関して、国立台湾史博物館、八田與一をめぐる史蹟や日本との交流、抗日事件タパニー事件記念館、日本家屋保存などについて調査した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究活動は、ほぼ計画通りに進んでいる。 予定した研究計画にしたがって、共同研究は進められており、2015年12月に実施した台湾における共同調査は、非常に順調に遂行された。また、帰国後、研究会を開いて意見交換を行うことで、韓国との異同が明確になり、帝国日本内での差異、そして特徴についての考察が進んでいる。 2015年7月に、長野県下伊那郡阿智村満蒙開拓平和記念館の参観、引き揚げ経験者に対する共同インタビュー、植民地や旧「満州」への「移民」に関する研究会の開催を行った。帝国日本の植民地と「満州」とを比較することによって、日本人と現地の人々との接触、政策の差異を考察することができ、大きな収穫となっている。 また、予算の執行についても、当初の計画と大きな齟齬はなく、順調に執行されたといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、最終年度として、これまでの研究成果を公表するための活動を主として行っていく。 7月には、帝国日本におけるモノの移動の実態に関する考察の一つの視角として、「税関」を取り上げ、研究会を開催する予定である。 12月には、国際シンポジウムの開催を予定しており、すでに報告者、コメンテーター、パネリストを決定し、各自、準備に入っている。特に、総合討論において、帝国日本における人とモノの移動を全体的に捉えた議論を行えるような人選を行い、また他地域の研究者の参加を得て、活発な議論によって、新たな研究の展開を期待し得るように計画している。 さらに、シンポジウムの成果をもとに、研究期間の終了までに、研究成果の公刊に向けた態勢を作ることを目指すものである
|