研究課題/領域番号 |
25245037
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
祝迫 得夫 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90292523)
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研究分担者 |
宇南山 卓 一橋大学, 経済研究所, 非常勤研究員 (20348840)
渡部 敏明 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90254135)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | 経常収支 / 為替レート / ISバランス / 家計の金融行動 / 企業の金融行動 / 家計調査 / 実現ボラティリティ |
研究実績の概要 |
祝迫は、研究協力者の中田勇人氏(明星大学)と、為替レートとエネルギー価格のショックが日本の産業別売上高に与える影響を論文と、総輸出に与える影響を分析した論文を執筆し、ディスカッションペーパーとして発表した。これらの論文では、為替レートが輸出や売上高に与える影響を、歴史的な円高進行期を中心とした幾つかのサンプルに分けて分析を行い、特に2000年代のサンプルでは海外の需要ショック・石油価格ショックの影響が大きく、逆に為替レート・ショックの影響は小さいことが示された。さらに、同じフレームワークを日本の輸入需要関数に応用した分析についても、研究を進めている。また祝迫は、日本国内のISバランスの分析の基礎としての家計の金融行動に関して、最近の日本のミクロデータ(金融RADAR)を用いて分析した論文を、小野有人教授(中央大学)らと執筆し、既に学術誌への掲載が決まっている。 宇南山は、家計関連の統計を比較することで、家計調査で家計簿によって記録されている所得のデータが一部過少になっている項目があることが明らかにし、消費についても、耐久財や高額なサービスなどの支出が過少に記録されていることを示した。これらは、家計貯蓄の動向を把握する上で影響が大きいため、統計的に補正をする必要がある。 渡部は、日経225の分散リスク・プレミアムが日本の景気の予測に有用であることを明らかにした。日本の景気一致指数に通常のマルコフスイッチングモデルを当てはめると、金融危機や東日本大震災の時期だけを景気後退期、それ以外の時期をすべて景気拡張期と推定するが、誤差項の分布をt分布にするか分散を確率ボラティリティモデルによって定式化すると、そうした問題が解消されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の輸出入・経常収支に関する構造VARを用いた研究については、当初の予定通り輸出に関する分析を優先してほぼ終えており、ディスカッション・ペーパーを2本出版し、海外の学会での発表も決まるなど、ほぼ計画通りに順調に進んでいる。日本の貯蓄投資バランスに関する研究については、家計部門については、宇南山を中心に非常に順調に研究が進んでおり、既に英文査読付き学術誌に論文が複数掲載されるなど、かなり優れた成果があがっている。企業部門の貯蓄投資バランスに関しては研究は、データの収集作業は進んでいるものの、分析作業に関しては、まだディスカッション・ペーパーや学会での発表の段階にはいたっておらず、今後より積極的に作業を推進する必要がある。 研究成果の発信については、コンファレンス開催を一年先送りした一方で、一橋大学政策フォーラム「輸出・経常収支の動向と日本経済の将来」(平成27年3月5日)を開催し、特に日本の輸出関する数量分析の研究成果を一般向けに紹介・解説する機会をもった。
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今後の研究の推進方策 |
構造VARを用いた分析を日本の輸入関数の分析に応用した研究を推進し、またアベノミクス以降の円安進行期のデータをアップデートした分析を行い、これまで(統計が利用可能な平成26年度末時点まで)のデータで輸出の増加・経常収支の大きな改善が見られていない理由についての考察を行う(祝迫)。家計の所得・消費・資産のデータの性質を考慮し、統計的な問題点を補正したデータを構築する。補正されたデータを用いて、特に1990年代以降の家計貯蓄率の低下要因について考察する(宇南山)。時変パラメータVARモデルやマルコフスイッチングモデルを用いて、日本の貿易・経常収支の構造変化について計量分析を行う(渡部)。 また、これまでの研究成果の発表を内外の学会で積極的に行い、平成27年度中に経常収支を中心としたテーマに関するコンファレンスを開催する。
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