研究課題/領域番号 |
25245042
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 光 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10313967)
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研究分担者 |
伊ヶ崎 大理 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (10336068)
川崎 晃央 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (10452723)
古村 聖 名古屋大学, 高等研究院(経), 助教 (30735783)
川地 啓介 三重大学, 人文学部, 准教授 (40455069)
相浦 洋志 大分大学, 経済学部, 准教授 (50511177)
家森 信善 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (80220515)
山本 庸平 一橋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80633916)
内藤 徹 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部(総科), 教授 (90309732)
別所 俊一郎 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (90436741)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 税競争 / 政策決定のタイミング / 外的ショック / VECM / 空間計量経済分析 / 動学的因子分析 |
研究実績の概要 |
理論研究班では、本事業における理論研究の最大の課題である、国際的な協調が難しい政策変数を用いた場合の財政競争モデルの構築に関して、政策決定のタイミングを手段とした新たな税競争モデルを国際誌に論文という形で掲載することに成功した。このテーマに関しては2010年に最初の論文が公刊されて以降、財政競争理論研究の分野ではホットイシューの1つとなっており、現在進行形で研究者が論文を発表する競争を繰り広げている。この公刊によって、当該領域の研究者の注目を集めることを期待できる成果を出すことが出来たと考えている。
地域経済の実証研究班では、グローバル化に由来して発生する外的ショックに対する地域経済や中小企業、地域金融機関の対応をVECM、空間計量経済分析、動学的因子分析などによって明らかにする研究が進められた。以前に比べて外的ショックから受ける影響が異なる都道府県間で連関しやすくなっていることなど、政策的にも重要な結果を得ることに成功している。また、昨年度に実施したアンケートの解析を進めた結果、外的ショックから受ける損失は中小企業のほうが大きいにもかかわらず、中小企業のほうがショックに対する備えが進んでいないことや、従業員数が小さい企業ほどグローバル化を機会と捉えるよりも脅威と捉える傾向が多いこと、海外との取引を行う理由としては、国内市場の停滞と海外市場の成長、国内でのコスト上昇が大きな比重を占めており、為替変動や自然災害といったリスク要因を挙げている企業は多くないこと等が明らかになった。さらに自治体の外的ショックにたいする政策反応に関する研究は、その後、米国・ドイツ・スペインとの国際比較を行うまで進む成果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度は、(1)名古屋大学における定期的なワークショップ開催を利用して研究情報の収集と定期的な研究交流を図ること、(2)前年度のアンケート結果のまとめと各班へ基礎的情報として提供すること、および(3)研究期間前半の成果の整理と研究終了に向けての成果取りまとめの方向性の検討を行う計画をたてていた。
(1)については、研究代表者が年度前半に大学を異動したため、年度後半において名古屋大学におけるワークショップ開催数が若干減少した。他方で、新しい所属先でグローバル市場研究ワークショップという形態で研究集会を開催すると同時に、国際学会(WEAI-Singapore)と国内学会(日本応用経済学会)において当事業の研究課題を論題とした特別セッションを組むことなどによって、研究担当者以外の関連研究者の関心を引くことができるなど、結果としては当初計画以上の進捗があった。 (2)については、2度にわたるクローズドな会合の中で期間前半の研究成果のとりまとめを行い、出版に向けた準備を進めてことができている。研究期間終了後に成果をとりまとめて出版して世に成果を問う予定であったが、3年目が終了する現時点で原稿の執筆内容と章立てもほぼ固まり、出版社も決まるなど、1年以上も早い進捗となっている。(3)については、RAを利用してデータ解析を行うことで結果を整理し、それを当初計画にあった研究分担者への情報提供にとどめることなく、結果を国内雑誌に公表することに、本事業に携わらない研究者へも情報を提供することができている。
(1)-(3)を踏まえた各班による研究も、学会発表数、論文公刊数が年度当初の予定よりも大幅に増加しており、(1)-(3)のいずれもが年度の予定を一歩超えた水準で進捗を見せていることからすると、初計画以上に進展した1年であったと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本事業の最終年度である。各班で遣り残した課題に取り組み、その解決に全力を挙げるとともに、本事業における成果を国内外の学会、研究集会、とりわけ、形として残る国際的な学術雑誌に公刊することに焦点を当てて取り組む。次年度は、複数の研究分担者が所属を移動する予定であることから研究環境の変更に伴う問題が生じるかもしれない。その場合は、班の他の分担者がバッファーとなって、班としての研究進捗に影響が出ないようにする。また、異動に伴って生じる問題を回避するためにマンパワーが必要な場合は、その班に対して、RAを柔軟に雇用できるように研究費の配分を多めに行うことで対応する。
さらに、次年度は研究成果を国内一般向けに伝えるために、本年度より進めている和書での公刊に向けた作業を引き続き行う。各班において残る研究課題への取り組み、成果の国内外の研究集会での発表と国際雑誌への公刊、図書としての研究成果の発信、そして今後の新たな研究課題の発掘という4つの柱をたてて、最終年度の研究を推進していく。
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