研究課題/領域番号 |
25245044
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆敏 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30203144)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | 為替レート / 高頻度データ / 効率性 / 裁定 / 介入 |
研究概要 |
本研究の目的は3つのパズル(理論と現実の乖離)--①外国為替市場における「効率性」②通貨当局が不胎化為替介入を行うこと③新興市場国による外貨準備の蓄積の効果--の解明であり、本年度はこのうち第一と第二のパズルの解明を進める予定であった 第一のパズルである効率性の研究については、ICAP社のEBSデータ(為替取引マッチングシステム)を収集し、詳細に分析するための準備を整えた。効率性のテストの基準のひとつとしてはBidとAskが逆転する現象(逆ザヤ裁定機会)と、3通貨の同時取引による利潤機会(三角裁定機会)を採用した。リスクの無い利潤機会が取引システムの中に存在する(していた)ということは為替市場における効率性に疑問を投げかけるものになる。裁定機会の発生頻度、継続時間等が、市場構造の変化(とくにアルゴリズム取引の隆盛)とともに変化してきた可能性があるので、裁定機会の存在を長期(1999~2012年)に渡り詳細に分析する。2013年度分のデータを購入して、分析開始の準備をおこなった。1月にはアメリカ経済学会に出張して、同じような研究をしている研究者との意見交換を行った。2月には、スタンフォード大学に出張して、研究者(星教授)と意見交換を行った。3月には、パリ(HEC大学)に出張して、三角裁定機会の代表的な研究者(Foucault教授)と意見交換を行った。このようにして、分析すべき仮説を明らかにして、次年度以降の研究の基礎を固めた。また、同じデータを使って分析をしている東京工業大学の高安研究室とは定期的に研究交流をおこない、お互いの分析について議論をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の初年度であり、しかも年度途中の採用であったため、研究の時間が限られており、研究成果を発表するにはいたっていない。データの購入、整理、準備的な分析、研究者交流、文献の読み込みをおこなうことで、どこに未解決の重要課題、検証すべき仮説があるのかを整理したことで、おおむね順調に進展している、といえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究により準備されたデータに基づき、つぎのような分析を行う。三角裁定については、基本的な分析がおわり、裁定機会がある時刻における執行リスクの分析にはいっている。これが解明されれば、三角裁定がどの程度利用されて利潤につながっていたかを計算できる。またアルゴリズム系のコンピューター・ディーラーの登場がこのような市場構造にどのような変化をもたらしたかを分析する。つぎに、取引価格単位の変更(2011年)に注目して、その前後で、市場構造はどのように変化したかを分析する。このような変化で、市場の効率性、流動性はどのように変化したかを分析する。介入については、日本の介入日の市場の変動性が、ほかの日とどのように違うかを分析する。たんに(bid, ask 中心値の為替レートの変化のみならず、best の外にある板のつき方の分析も行う。介入手法としては、日本とスイスを比較対象とする。
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