研究課題/領域番号 |
25245049
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
加藤 俊彦 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (20295463)
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研究分担者 |
沼上 幹 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (80208280)
軽部 大 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (90307372)
藤原 雅俊 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (20411019)
坪山 雄樹 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (50508645)
佐々木 将人 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (60515063)
渡辺 周 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 助教 (90754408)
高橋 大樹 武蔵野大学, 経済学部, 講師 (50780946)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経営組織 / 経営戦略 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の大手企業を対象として、事業組織を分析単位とする質問票調査によって、定量的データを蓄積するとともに、学術的な観点から分析を進めることを主たる目的としている。 本研究の4年目にあたる平成28年度は、まず第2回(平成16年度に開始した調査からは通算第7回)となる事業組織と事業戦略に関する質問票調査について、当初の計画通り、前半で準備作業を行い、後半で参加が確定した企業に対して質問票を配付して、回収後、データ入力・統合を行った。 また、新たな質問票調査の実施と並行して、平成26年度までに実施した質問票調査で収集したデータを対象として、分析作業を進めた。分析作業からは、本研究における鍵変数となる「組織の〈重さ〉」が、様々な組織成果と安定的な関係(負の関係)にあることが明らかになっている。また、組織の〈重さ〉に対して理論的には影響を与えることが仮定される組織特性(組織構造や組織過程に関連する変数)と、組織の〈重さ〉との関係についても、安定的な関係にあることがわかった。とりわけ重要であると思われるのは、分析単位として設定した事業組織におけるコミュニケーションのあり方、組織規模、事業組織の責任者(BU長。通常は事業部長などが該当する)のリーダーシップ・スタイルをはじめとする要因との関係である。さらに、事業組織における戦略関連の要因や製品市場に対する志向性などについても、組織の〈重さ〉や組織特性などと有意な関係にあることが確認されている。これらの知見に関しては、学会で報告するとともに、論文等にまとめ、その一部については平成28年度中に公刊している。 加えて、平成28年度には、前年度に引き続き、本社部門への調査対象拡大の可能性について、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的の1つは、日本の大手企業を対象として、事業組織や経営戦略に関する詳細な質問票調査を実施して、平成16年度から隔年で行ってきた5年分の調査から蓄積してきたデータベースと併せて、分析を進めていくことにある。当初の計画では、初年度である平成25年度に調査の実施準備をした上で、2年目にあたる平成26年度に第1回調査(研究グループによる調査としては、通算6回目)、4年目にあたる平成28年度に第2回調査(通算7回目)を実施することとしており、本調査への参加企業のご協力により、予定通り実施することができた。 また、平成25年度から平成28年度までの4年間には、本研究実施前から蓄積してきたデータを含めて分析を継続して実施してきた。その結果として、本研究開始からの4年間で、国内外での学会において8件の発表を行うとともに、英文論文1本を含む6本の論文を発表している。さらに、現時点で公刊予定であるものも含めて複数の論文を作成するとともに、書籍の刊行に向けた作業も進めている。これらの論文や書籍については、研究期間中の発表を目指している。 本研究では、日本企業の大手企業を対象として質問票調査を継続的に実施して、データベースを累積的に作成した上で、継続的に分析することによって、本研究グループがこれまでに発表してきた研究成果の妥当性や一貫性を確認するとともに、新たな観点での分析や、状況の変動に伴う企業行動の変化に関する考察についても、進めてきた。膨大な作業を伴うこれらの研究プロセスにより、経営組織や経営戦略に関する新たな学術的な知見が生み出されるとともに、実務的な示唆も得られている。 以上から、現在のところ、当初の計画に沿う形で、研究活動がおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度となる平成29年度は、まず平成28年度に実施した質問票調査で得たデータを対象として分析作業を行い、先に実施した調査との一貫性や相違点などを確認する。 その上で、今後はこれまでに蓄積してきたデータや知見を総括する観点からの分析作業を精力的に進め、調査の全体像を学術的な視点から明らかにしていく。とりわけ本研究は、日本企業の事業組織を分析対象として、国際的にも類例が限られた、企業内部の状況を中心とする独自のデータベースを構築することを特徴の1つとしている。そのようなデータベースに基づいて、事業組織における実際の状況を定量的に分析していくことにより、経営組織論を中心とする領域に対する学術的な貢献が期待できる。 また、本研究グループによる学術的な研究活動を通じて得られた、日本企業の経営組織や経営戦略に関する知見は、調査に協力していただいた企業の方々からも、実務的にも有益な示唆が得られるものとして、評価されている。このような実務的な観点での貢献についても、書籍の刊行などを通じて、広く社会に還元していく。 さらに、本研究で得られた知見は、日本だけではなく、諸外国の企業にも有益な知見を与えることが想定される。特に本研究で焦点を当てる企業組織における問題は、成長期から成熟期への移行に伴い生じることが想定される。そこで、成熟期にある先進国の企業や、これから成熟期を迎える新興国の企業に対しても、部分的にでも当てはまる知見をもたらすと思われる。この点から、日本国外においても、学術的なコンファレンスに加えて、実務家を対象とする場においても発表する機会を設けていく。 加えて、本調査は、事業組織における組織と戦略の問題に的を絞ってきており、分析対象を本社部門などに拡大して、研究内容を深耕する可能性についても、研究期間中に一定の結論を得たい。
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