研究課題/領域番号 |
25245065
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
内川 惠二 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00158776)
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研究分担者 |
三橋 俊文 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (20506266)
福田 一帆 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (50572905)
栗木 一郎 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (80282838)
山内 泰樹 山形大学, 理工学研究科, 教授 (60550994)
坂田 勝亮 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (40205745)
吉澤 達也 金沢工業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90267724)
篠森 敬三 高知工科大学, 工学部, 教授 (60299378)
不二門 尚 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50243233)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 色覚学 / 眼光学 / 視覚情報処理 / 色彩工学 / 感覚・知覚・感性 |
研究概要 |
本年度は個人の眼光学系の分光吸収特性、L/M比の測定及び色の見えの測定のための方法の確立を実施計画とした。 眼光学系の濃度測定に関しては、水晶体の平均データの調査から個人間で対数濃度で0.2の差異があることが分かり、個人別の分光測定が必要であることが確認された。黄斑色素濃度については既存の装置を用いて試行として数人の被験者の黄斑色素を測定し、方法の有効性を確認した。 L/M比の測定に関しては、網膜電位(ERG)測定システムのノイズ対策として専用アンプを導入し、補償光学系(AO)には高速DM deformable mirrorを取り付け、両方法によるL/M錐体比の精度良い推定を可能とした。また、補償光学走査レーザ検眼鏡を用いて錐体の輝度変化について調べた。 色の見えの測定に関しては、刺激呈示用のハイパースペクトルデイスプレイを完成させ、ハイパースペクトルイメージの刺激呈示を可能とし、ユニーク色を与える単色光の波長、色度図内でのユニーク色軌跡を求める準備を完了した。また、個人のL/M比と色弁別閾値の関係を測定するためのCRTモニターを用いる装置の準備を行った。さらに、fMRI測定実験に関する予備的測定を行い、視覚野のマッピングを行う実験と色に対する反応実験を行った。これらの実験は錐体応答およびユニーク色の脳内表現について調べることを目的とし、錐体反対色に関連する色応答とユニーク 色に関する応答を測定し比較した。 今年度は研究会を6月と3月に2回開催し、研究代表者と各分担者間で研究の目的と方法、及び担当についての確認と意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究目的は、人間の網膜内の L, M錐体の比率と分光感度には個人差が大きいにもかかわらず、色の見えには個人差がほとんどないことから、 L, M錐体から大脳皮質に至る色覚過程で、L、M錐体構成の個人差を補償し、色の見えと物理的な光スペクトルとの普遍的な対応関係を付けるキャリブレーションメカニズムが存在していることが考えられるが、この色覚個人差補償メカニズムを調べるために、補償光学眼底カメラ等を用いた光生理学的方法でL/M比の人差を明らかにし、自然風景からの昼光反射スペクトルを刺激光として、その色の見えを心理物理的に測定しすると共に fMRI法によって普遍的な色の見えの脳内部位を同定し、最終的に、アウトカムとして新しい環境光適応型色覚モデルを提案することである。 本年度は、眼光学系の濃度測定に関しては、水晶体の個人別の分光測定が必要であることを確認し、黄斑色素濃度については既存の装置を用いた方法の有効性を確認した。L/M比の測定に関しては、網膜電位(ERG)測定システムと補償光学系(AO)の両方法によるL/M錐体比の精度良い推定を可能とした。色の見えの測定に関しては、ハイパースペクトルデイスプレイを完成させ、ハイパースペクトルイメージの刺激呈示を可能とし、ユニーク色を与える単色光の波長、色度図内でのユニーク色軌跡を求める準備を完了した。また、個人のL/M比と色弁別閾値の関係を測定するためのCRTモニターを用いる装置の準備を行った。さらに、来年度実行予定のfMRI測定実験に関する予備的測定を行い、錐体反対色に関連する色応答とユニーク 色に関する応答を比較することで、錐体応答およびユニーク色の脳内表現について調べることを可能とした。 以上の理由により、本年度の研究は当初の予定以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、個人の L/M比と色の見えのデータ収集を本格的に行い、また同時に、fMRI法を用いて赤緑 (L-M)反対色応答が零になる見えに対応する視覚皮質の部位を明らかにするための実験を行い、最終的には色覚系の補償メカニズムの解明と新しい環境光適応型色覚モデルの提案を行う。 まず、 ERGフリッカー法による被験者毎の L/M比の測定、心理物理実験による色の見えの測定、被験者毎の錐体の遺伝子解析、錐体分光感度の眼球光学系の補正を継続して行う。 AO眼底カメラ装置は本年度中完成させ、予備的実験を行う。また、 fMRI法によって視覚皮質領 V1~ V4までの部位を観測し、色相が色相円環上を角度に沿って変化する刺激光に対して、各部位の応答がユニーク黄とユニーク青の見えに対応して極小値を持つなど、特異的な変化をする場所が V1~ V4のどの部位に存在するかを調べる。 心理物理実験では、各被験者毎に、刺激に自然風景画像を用いて照明光のスペクトルを変化させた場合、赤みも緑みもないと知覚する照明光スペクトルを求め、さらに、単純色刺激を用いてユニーク色軌跡と色弁別閾値を求める。
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